子供の頃のつらかった体験が与える影響

アトピー治療に最も効果があるステロイド剤で最初にしっかり患部を治し、徐々にその量を減らして、副作用を最小限に抑える方法を「プロアクティブ治療」というが、これが大きく悪化したアトピーに対する今の標準治療のスタンダードだ。

そして治療薬も飛躍的に進化してきている。
ステロイドだけでなくタクロリムス軟膏  (※5)JAK阻害薬というステロイドではない炎症を抑える塗り薬も登場している。そして重篤患者のために、まだまだ高価だが注射タイプのデュピルマブ (※6)ネモリズマブ (※7)などのかゆみを抑える薬も、近年開発された。

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「ステロイドが怖いから、皮膚科にかからない。代わりにネットで情報があふれている民間療法に頼る、という流れは、重症の患者さんを増やす結果につながっている可能性があります。できれば、根拠のある治療法を知ってほしいというのが、私がSNSなどで情報発信を積極的に行う理由のひとつです。

子どもがアトピーの場合、その親にもアトピー疾患がある場合が多くなるのですが、親世代には治療法・指導法がまだしっかりしていなかった時代に皮膚科に通い、十分に治りきらなかった失敗経験を持っている人も少なくないのです。

これは我々医師にも、責任があります。薬そのものや薬の塗り方の説明、その後のスキンケア指導を十分に行わないまま、患者さんを『きちんと薬を塗らないから治らないんだ!』と叱る医師もいますから。これは、医療制度的におひとりおひとりに時間を取りづらい構造も影響しているかもしれません。

そんな状況がステロイドだけでなく医療に不信感を抱いていることが、親御さんをエビデンスのない民間療法に走らせている原因のひとつになっているのかもしれませんね」(堀向氏)

親が昔のアトピー治療で改善しなかった経験を持っているとその思いが子供に引き継がれてしまうことも。でも、治療法は今飛躍的に進化している。(写真はイメージです)photo/iStock

※5:Ann Dermatol 2012; 24:144-50.
※6:J Allergy Clin Immunol 2017; 140:888-91.e6.
※7:N Engl J Med 2020; 383:141-50.