『脱ステ』に走る人たち

2000年に、アトピー治療のガイドラインができ、これに沿った治療が全国の皮膚科で行われる『標準治療』となると、アトピーが重症化する患者さんは激減したと堀向先生は話す。

「ステロイド剤の適切な使い方と同時に、保湿などのスキンケアの重要性も治療と合わせてしっかり説明・指導するようになり、1度よくなった肌を再度悪化させないケアが広く普及してきたからです。

以前はよく見られた目の合併症(網膜剥離や小児の白内障)も、現在では大きく減りました (※3)。そもそもこうした目の症状は、昔は『ステロイドが原因なのでは』と言われていましたが、今では強く目をこすったり叩いたりして激しいかゆみを抑えようとする物理的刺激が原因で起こることがわかっています。

つまり症状を薬と保湿で上手に抑えられるようになったからこそ、目に合併症を引き起こすほど重症化する人が減っているということです」(堀向氏)

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確かに、昔に比べるとものすごくひどいアトピーの人を街で見かける機会は減っている気がする。しかし気がかりなのは、最近もSNSで話題になった「脱ステ」実践によって、全身を掻き壊してかさぶたまみれになっているような小さな子どもたちだ。発信しているパパ・ママは、強い信念と激しいステロイド嫌悪をアピールしつつ、我流で子どもを『治そうとしている過程なのだ』と主張する。

子供がかゆがってもステロイドの怖さが上回ってしまう方も。(写真はイメージです)photo/iStock

「ステロイドに対して、否定的な気持ちがある方がいらっしゃることへの気持ちはわかります。私は、その大元には医療不信があるのだと思っています。お子さんが良くなることを望んでいるお気持ちは一緒なのです。私自身、ステロイドは好きな薬ではありません。

ただし、それはステロイドそのものに問題があるからではありません。ステロイドは副作用が起こらないように十分な配慮が必要な薬で、使い方を十分に説明して患者さんに理解してもらわなければならない、医師にとって『とても手間のかかる薬』だからなんです。

それでも使うのは、皮膚の炎症を抑える治療として現在、よりベターな選択だから。炎症部を掻き壊してしまうと治りが遅くなるだけでなく、悪化した皮膚から雑菌が入って合併症を引き起こしたり、アレルギー体質そのものを悪化させるリスクも高まります (※4)。そしてステロイド薬は治療の過程で必ず、減らす、止めるが、我々の目標なのです」(堀向氏)

※3:Jpn J Ophthalmol 2019; 63:410-6.
※4:J Allergy Clin Immunol 2017; 140:1572-9.e5.