美容目的の使用で起こった混乱

なんと『塗ると肌が白くなる』と、美白コスメ的に化粧下地に使う人が現れたのだ。ステロイド剤は血管を収縮させて炎症を抑えるものなので、顔に塗れば一時的に肌が白くなる。ところが長く使い続けると、収縮するはずの血管が、その収縮する力を失って逆に拡張してしまう”毛細血管拡張“が起こる。さらにその症状が進むと“酒さ様皮膚炎”となるケースがでてくる。美白どころか、逆に赤ら顔になってしまうわけだ。

「治療薬を美容目的に使うこと自体が間違いなのですが、このような誤用によるトラブルがステロイドの副作用として注目を集めたことにより、『ステロイドは怖い』というネガティブなイメージが定着してしまったのかもしれません。それによって治療でステロイド剤を使うことを怖がる患者さんも急増しました」(堀向氏)

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当時は他にも、ステロイドを塗り続けると「目が見えなくなる」、「肌が黒くなる」、「顔がまん丸になる」、そして「1度使ったら最後、やめられなくなる」……といった怖い噂をたくさん耳にした。だから私も昔は、ステロイド軟膏は、できるだけ薄―く、少量を塗るようにしていたことを思い出す。

「おっしゃる通り、副作用が怖いからと少量しか塗らない人は今も多いです。『目が見えなくなる』や『肌が黒くなる』はアトピーの合併症ですし、『顔がまん丸になる』は基本的には内服薬の副作用です。今は、多くの医師 は症状に応じた強さのステロイドを処方しているので、指示された部位に指定のステロイド軟こうを適量(目安は、口径5ミリ程度のチューブから、大人の人差し指の第一関節の長さくらいを、大人の手のひら2枚分くらいの患部に塗る)使えば副作用は少なく効果は出るはずです。

でも、怖がって少量しか塗らなければ、なかなか治りません。そうなると『よくならないのにリスクは高い』とステロイドに対してさらに不信感を抱いてしまいますよね」(堀向氏)

ステロイドは大人の人差し指の第一関節の長さぐらいの量を大人の手のひら2枚分ぐらいの患部に塗るのが効果的な使用法だ。photo/iStock