SDGsは「大衆のアヘン」。資本主義に緊急ブレーキを!

経済思想家・斎藤幸平氏に聞く【前編】
斎藤 幸平 プロフィール

意味のない仕事が生み出す労働の「疎外」

――考えてみれば、そもそも化粧品のパッケージデザインをピクセル単位で調整したりすることに多大な労働力を割き、わずかな差異に人々を熱狂させるというのは、労働の目的からも、商品のもともとの効用からも相当にかけ離れているといえます。

斎藤 マーケティングや広告、コンサルティング、金融業や保険業といった「重要そうに見える仕事」は、実は社会にとって本当に重要なものを生産していないのではないか。そのことに、仕事をしている本人たちも薄々気が付いているのではないか。そういう仕事を「ブルシット・ジョブ」(くそくだらない仕事)と呼んだのがデヴィッド・グレーバーですが、その指摘に耳を傾けるべきだと思います。コロナ禍で明らかになったように、本当に社会の役に立っている仕事、エッセンシャル・ワークは、医療や介護、教育や農業など、別の分野にあるのです。

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――しかも「重要そうに見える仕事」に就く人は、しばしば高給取りです。現場で汗水流している人が安月給で、一方のハイクラスビジネスマンがブランド物を身につけながらエアコンのきいた部屋で会議やタイピングをしている。そんなコントラストが現実にある。彼らに比して「下」と見做されがちな現場の「働かされている感」は大きな問題で、それはマルクスのいう「疎外」の表れです。

斎藤 その「疎外」に別表現を与えたのがグレーバーだと思っています。「ブルシット・ジョブ」にリソースの多くが投入されている事態は、疎外の極致です。「この仕事に意味があるのかな……」と本人も思っているような業務、たとえば先ほどのコンサルティングなどもそうですが、プレゼン用の資料をやたらに作り込むとか、無駄な会議をたくさん開くとか、そういった仕事が積み重なっている。そんなことに膨大なコストをかけてどうするのかという話です。

――しかも、そのコストがめぐりめぐって自然を破壊している。