死ぬということは、考えにくい。試しに考えてみたら、すぐわかります。
なぜ、死ぬということは考えにくいのだろう。
あとしばらく死なないだろうから、さし迫っていない。おまけに、死ぬのは恐ろしい。それに考えようにも、手がかりがない。だいいち、そんなことを考えても気が滅入るだけだ。だから考えにくいのだ。
いちおう、そう考えられます。
でも、死ぬことを考えにくいほんとうの理由。それは、ものを考える「このわたし」が存在しなくなるから、なのです。