小さなストレスが積み重なって大きくなる

ちなみに私は決してアトピー重症者ではない。それでも書ききれないほど、肌が健康な人がしなくてもいい小さなガマンや、細々とした面倒な作業、選別が必要なのだ。しかも、毎日。アトピーを発症した18歳のころからずううううっと。

そして、河野大臣に投げかけられたのと同じような何気ない言葉や視線で、日々小さなダメージを受け続ける。

よく言われるのが「お酒、強いんでしょ?」という一言だ。アトピー持ち特有の赤黒い肌色が、酒飲み(肝臓が悪い?)をイメージさせるらしい。でも実際の私は、全くの下戸。「いやそれが、一滴も飲めないんですよ。アレルギーで」と半笑いで答えるのにはすっかり慣れたけれど、それでもチクッと心に小さなトゲが刺さる。

顔のアトピーが悪化しているとき、すれ違う他人にチラッチラッと見られるのも地味にキツい。自意識過剰、相手に悪気がないのは重々承知だ。それでもへこむのは「見た目」が健康な肌の人とは明らかに違う、という自分自身が抱え続けるコンプレックスのせいなのだろう。

ランチの際、お皿の隅にNG食品を取り分けていると「意外に好き嫌い多いね」。マスクの上から顔をこすっていると「マスク触ると手にウイルス付くかもよ」……。悪意なくそんな言葉をかけられるたび、笑顔で流しながら、心の中でつぶやくのだ。「アトピーだ。文句あっか。」

マスク着用で随分と気分は楽になったが、症状が悪化しているときは周囲の目が辛いことも。photo/Getty Images
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「アトピー」の病名が知られていなかった30年前 

今は広く認知されているが、30年ほど前は「アトピー」という病名すら、世間では知る人が少なかった。私より症状が重い妹が最初に診てもらったお医者さんも当時は「アトピー」ではなく、「アレルギー性皮膚炎」と言っていた(※1)覚えがある 。

そんな妹に関して、忘れられない記憶がある。学生時代に一緒に行った銭湯でのこと。妹の隣に座っていたおばあさんがいきなり言った。「ちょっと! その『皮膚病』移るんじゃないの? 湯舟に入んないでよ!」。妹はしばらく押し黙った後、さっとシャワーで石鹸を流し、何事もなかったような調子で「コーヒー牛乳飲むっ!」と出て行った。思春期真っ盛りのJKだった妹の辛さは、どれほどだっただろう。 

あの頃に比べれば、今は患者が増えた分、社会的理解も治療法も格段に進んでいる。
でも。よく知られていて珍しくないし、生死を左右するものではないけれど、「見た目」でわかる病気なだけに、患者自身が抱くコンプレックスは今も大きい

(※1):「アトピー性皮膚炎」という病気は、1923年にCoca医師が提唱されたあと、1933年にSulzberger医師が初めてその名をつけました(もちろん、その前から存在は知られていたようです)。1990年代は、『ステロイド忌避』の嵐の時期なので、医師もあえてアトピー性皮膚炎のことばを避けたのかもしれませんね。(東京慈恵会医科大学 葛飾区医療センター医師の堀向健太氏)