私が16年前に出版した記念すべき1作目の1ページ目の小見出しには、「ニセポジティブの呪い」とある。そう、私早川がこれまで生きてきた指針の1丁目1番地は“ポジティブ”がテーマだったのだ。
かつてより、多くの人たちから「早川さんは本当にポジティブでいいですね」と言われ続けてきた。たしかに、その通りなのだが、あまりにもそのように言われるのも「能天気でいいですね」と軽く見られている気もして、その反発もあったのかもしれない。
よって、ただ前向きなだけじゃないという思いを込め、“呪い”という強烈な表現を用いた。こう見えて私も、繊細で悲観的なところがあるのだ。
だからと言って、最近もよく巷で耳にすることの増えた「ピンチはチャンスだ」という楽観的なプラス思考を否定する気はさらさらない。心の底からピンチが大チャンスだと思える人は、希少価値の高い、いい意味でのエイリアンであることは間違いないのだ。
だがはたして、そんな能天気なポジティブシンキング“だけ”で、人生の窮地を脱することなどできるのだろうか。
いや、とてもじゃないが、そんなに甘くはない。
誰が何と言おうと「ピンチは、やはりピンチ」なのである。
たとえば、営業現場の第一線では、必ずしも、楽観的で前向きな性格のビジネスパーソンばかりが活躍しているわけではない。むしろ、控え目でストイックな悲観論者のほうが、常に高成績を持続しているケースは少なくないようだ。