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電気自動車の「価格破壊」で、トヨタの売り上げが「5分の1」になる日

ホンダや日産は全くついていけない

自動車の世界に地殻変動が起きようとしている。数百万円の新車を買い、くたびれたら買い換えるという慣習は、まもなく消える。電気自動車の「価格破壊」が、業界勢力図をガラリと塗り替えるのだ。

30万人の雇用が失われる

「将来的に電気自動車(EV)の価格は5分の1になるでしょう。単純計算すれば、自動車メーカーの売上高が5分の1になることも十分にあり得るということです」

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自動車や家電などに搭載される小型モーターで世界トップシェアを誇る日本電産の創業者、永守重信会長(76歳)は今年9月、筆者にこう語った。

永守氏は会長になった今でも、1円以上、つまりすべての物品購入に決裁を課す「1円稟議」などの「マイクロマネジメント」に長けている。これは単にコストにうるさいという意味ではなく、「変化の兆しは末端に宿る」という考えのもと、小さな変化も見逃すまいとしているのだ。

こうした短期間での業績管理に加えて、永守氏は長いスパンで世の中の変化を読む目も鋭い。コスト削減手法を構築するために、1920〜30年代に米国で起こった大恐慌で、企業がどんな対応を取ったかまで遡って調べ上げているとされる。

 

日本電産はオイルショックが起こった'73年に永守氏が中心となって創業。その時に「50年計画」を作った永守氏は「売上高1兆円計画」をぶち上げ、一緒に創業した同志からも「1億円の間違いではないですか」と失笑を買ったが、半世紀を待たずしてその夢を実現させた。

その「具眼の士」である永守氏の指摘は、単なる予想に止まらないと筆者は考えている。

日本の消費者には、クルマの価格が5分の1になる、という実感はなかなかわかないかもしれない。バブル経済崩壊後の「失われた30年」で物価は下落したが、クルマの値段は下がるどころかむしろ上昇しているからだ。

総務省の小売物価統計調査によると、'09年の軽自動車の価格は約104万円だったが、'19年は約142万円と40%近く上がっている。

しかし、実は消費者から見えづらい自動車産業の深層部では、技術革新やビジネスモデルの変化が着実に起こっている。それが今後5年、10年の間に一気に表面化し、「地殻変動」を起こすことは間違いない。