ティラノサウルスとトリケラトプス、二大恐竜の起源はアジアだった?

「中国の角竜」が塗り替えつつある旧来の常識
安田 峰俊 プロフィール

大型角竜、ついに見つかる

この2008年からの発掘では、龍骨澗から山ひとつ隔てて4キロメートルほど離れた臧家荘という村近くの山肌で、大量の恐竜化石の集積地が見つかった。

その多くはシャントゥンゴサウルスの仲間かとみられるハドロサウルス類だったが、趙喜進の弟子筋にあたる徐星(Xu Xing)が、そのなかで巨大な角竜の頭骨を発見することになる。

当時、北アメリカ以外で大型の角竜の化石は見つかっておらず、この発見は恐竜研究史を大きく更新する大発見だと言ってよかった。シノケラトプス(中国角龍)という、中国を背負うような学名が名付けられたのも、趙喜進や徐星の気負いを示すものともいえる。

発見されたシノケラトプスの化石。XU Xing et al. 2010より

角竜で最大だったかも

元来、大型の角竜はカスモサウルス類とセントロサウルス類(それぞれ中国語では「開角龍」類と「尖角龍」類)に二分される。カスモサウルス類はより体格が大きく頭骨のフリルも発達しており、有名なトリケラトプスはこちらに属する。いっぽう、セントロサウルス類は比較的小柄でフリルも小ぶりであることが多く、スティラコサウルスやパキリノサウルスがこちらに属する。

シノケラトプスは形質的にセントロサウルス類であるとされたが、頭骨の大きさから、この仲間のなかでは最大級の体格の持ち主だったとみられた。

後に肩甲骨も見つかり、こちらは世界で見つかったあらゆる角竜類の肩甲骨のなかでも最大級だったことから、おそらくシノケラトプスはセントロサウルス類はもちろんのこと、角竜全体で見ても最大クラスの恵まれた体格を持っていたようだ。

ティラノサウルスもトリケラトプスも

シノケラトプスの発見前から、白亜紀の北米大陸とユーラシア大陸はおそらく陸路で接続していただろうとみられてきた。だが、かつてこの説の最大の弱点は、ユーラシア大陸の側で大型の角竜が見つかっておらず、北米との生物分布の連続性を十分に確認できない点にあった。ゆえに、シノケラトプスの発見は、北米大陸とユーラシア大陸の陸路接続を証明するうえで非常に重要な論拠となった。

徐星は雑誌『科学人』に2012年5月に寄稿した一般向け記事「中国角龍出土記」のなかで、角竜はおそらくその起源がアジアに求められ。それが北米大陸へ移住してからさらに進化して繁栄していっただろうと仮説を述べている。

こうした進化の過程は、アジアにいた頃の祖先は比較的小さな獣脚類だったのが、北米に移住してから大型化したティラノサウルスとも類似したものだ。

恐竜の代名詞的存在でもある獣脚類のティラノサウルスと角竜類のトリケラトプスが、ともにアジアに起源を持っていた可能性が高いのは、大変興味深い。

2020年8月にも新種発見!

なお、2001年には同じ諸城市で見つかった全長10~12メートルの大型のティラノサウルスの仲間であるズケンティラヌス・マグヌス(巨型諸城暴龍:Zhuchengtyrannus magnus)が報告されている。

また、シノケラトプスの報告年と同じ2010年には、角竜類のなかでは原始的な形質を残すレプトケラトプスの仲間である、ズケンケラトプス・イネクスペクトゥス(意外諸城角龍:Zhuchengceratops inexpectus)というユニークな中国名の角竜も報告された。

最も新しいところでは、シノケラトプスの発見地と同じ諸城市臧家荘付近で掘り出された、非常に保存状態がよい新種の曲竜類が2020年8月に報告されている。こちらはシナンキロサウルス・ズケンゲンシス(諸城中国甲龍:Sinankylosaurus zhuchengensis )と、あたかもシノケラトプスと対になるかのような命名がなされた。

白亜紀後期の中国山東省では、大型のティラノサウルスの仲間と、大型の角竜類と曲竜類が闊歩していた。北米の恐竜世界とそっくりな姿が、かつてアジアでも見られたのである。

シナンキロサウルスの化石。 Wang et al. 2020より

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