抜け出せなくなる
たとえば、公共事業の建設現場では談合を一掃することが難しいが、談合の現場にも反社会的勢力が関与していることがある。
3次以降の下請けに絡んでくる零細や小規模の建設関係の企業は体力に乏しいことから、談合の魔の手にからめとられやすいのだ。

中小零細の建設会社を10社ほど集めて、談合をヤクザが取り仕切る。サークルさえ作ってしまえば、反社会的勢力はその中心に立って入札の仕方を差配できる。それが彼らに隠然たる力を与えてしまう。
「今回の仕事はA社に任せる。B社は次に仕事を取らせるから、今回は協力してくれ」
次の仕事が約束されるから、B社はA社に仕事を取らせようとA社の希望入札価格の少し上の値段を提示する。こうして役所が想定する入札価格のギリギリで、A社が落札するように手配するのだ。
こうした談合はれっきとした犯罪で、一度関与すると企業は抜け出せなくなる。やがて社長は、いつか談合に手を染めたことが明るみに出て逮捕されるのではないかと不安に駆られたようになる。しかし、仲介するヤクザに談合グループの脱退を申し出てもこう言われてしまうことだろう。
「今まで、あなたがやったことを公にさせてもらう」
あるいはこんなささやきもするだろう。
「俺は反社会的勢力だ。俺たちと付き合って取引した事実を、警察に洗いざらい話させてもらう」