2020.11.21
# ライフ # 本

大人が知らない間に「若者のライトノベル離れ」が起きていた…!

正確には「ラノベの中学生離れ」、なぜ?
飯田 一史 プロフィール

結局、何が起きていたのか

結局、中高生はラノベを読んでいるのか読んでいないのかややこしいと思うかもしれないが、まとめるとこういうことだ。

・かつては多くのライトノベルがおおむね「中高生がターゲット」という前提で刊行されていたため、新作・新シリーズの売上はまだバラけていた。しかし、2010年代には購買層の年齢が大人であるウェブ小説の書籍化が一般化し、その流れが文庫ラノベレーベルにも波及した。以降、中高生向けではない作品が、単行本はもちろん文庫ラノベでも増えた(「ラノベの中高生離れ」)。そういう作品を中高生は積極的に買わない
・中高生が本離れしているという事実はない。学校読書調査や朝読のランキングを見ると「映像化作品」かつ「中高生でも楽しめる内容」のラノベは変わらず10代に支持されている
・ラブコメ以外のジャンルは年齢が下の層がなかなか新規に入ってこない。ラブコメも中学生は厳しい
・アニメ化された比較的新しいシリーズと並んで『SAO』や「物語」シリーズのような(図書館にも入っている)10年選手が中高生には特に支持されている
 

ここから推論してみよう。

お小遣いが少なくハズレを引きたくない中高生は、すでに話題になっていて、かつ、自分が興味を惹かれるものをまず買う。新作にはあまり手を出さない。特に社会人以上の登場人物が主役のものは買わない。

新作が売れなくなると、新シリーズの初版部数が減っていく。ますます既存の人気作が目立つようになる。売れる作品と売れない作品の人気の二極化が加速し、中高生のメジャー作品志向がさらに強まり、需要がかつて以上に特定作品に集中する。

一方、大人の読者(大量に購買する、いわゆるラノベ読み)は人気作もそれ以外も買うものの、大人向けと中高生向けなら大人向けのほうに食指は伸びやすい。すると、比較的売れる新シリーズの読者の平均読者年齢は高くなる。結果、版元も作家も中高生向けにはますます新作を作らなくなる。こうして新規タイトルを中心に「中高生のラノベ離れ」がより進む。

つまり、中高生のラノベ需要自体は大きく減ったわけではないのに、供給側が大人向けと比較して中学生でも楽しめる新作を以前ほど積極的に作らなくなった。またはローティーンやミドルティーンに対して積極的に売り出すしくみをつくらなかった/つくれなかった。それによって、一部の映像化作品を除く新作・中堅作品(特にラブコメ以外)を中高生が読まなくなった。こういうサイクルが回り始めたがために、今や年齢が低い読者ほど「最近は少ない」「前より減った」と現場で感じられている――ということではないか。

批判したいわけでも嘆きたいわけでもないが「ラノベの中学生離れ」はこの10年での大きな変化である。

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