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『千と千尋』超えも見えた『鬼滅の刃』、「新機軸はないが王道」と言えるワケ

現代の「鬼」を問い直す

長編アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の快進撃が止まらない。公開後24日間での興行収入200億円超は、およそ現実と思えるレベルではなく、同時に数字ほど具体的なものはない。

しかし、1年前に放送されたテレビシリーズ版で、主人公・竈門炭治郎の家族が鬼に皆殺しにされ、唯一の生き残りでありながら鬼化してしまった妹・禰豆子を伴って修行に入るくだりが丁寧に描かれたのに比べて、今回の劇場版は、かなり異色である。

テレビシリーズの続きになってはいるが、端的にいえば内容その他を含めて目立った新機軸はなく、約2時間の尺数を考えれば、映画らしい厚みや驚きに欠ける。それはつまり王道を貫いたとも言えるのだが、だからこそ大ヒットにつながったというには説得力に乏しい。

 

テレビアニメ「劇場版の歴史」

テレビアニメの劇場版には、いくつかの型がある。

1960年代半ばに始まった「東映まんがまつり」を思い出す方もおられると思うが、ここでは放送済みのテレビアニメがそのまま映画館で上映された。ネットもビデオもなく、低画質のテレビがやっと家庭に1台あるかないかという時代、放送済みであっても大スクリーンでの上映は好評だった。

1974年放送の『宇宙戦艦ヤマト』は、テレビ放送終了の約2年半後(77年8月)に劇場版が公開されたが、これはテレビシリーズ全26話を130分に再編集したものである。

すでに出来上がった映像の「転用」であり、その意味では比較的安価で制作できるため、再編集による劇場版は、その後『機動戦士ガンダム』など他のテレビアニメでも採用された。

また、テレビシリーズを継続しながら別に新たなストーリーを作り、オリジナル作品として制作するスタイルがあり、『ドラえもん』や『名探偵コナン』の劇場版の多くが、これにあたる。

そして、テレビ放送終了後に、続編をビデオや劇場映画として制作するスタイルで、今回の『鬼滅』はこれにあたる。ただこれは、どちらかというと原作やテレビシリーズのファン向けに特化して制作されるもので、『鬼滅』のように、劇場版の段階で突如新たな観客を集めて大ヒットする例は稀である。