『ムーミン』物語の意外な事実…トーベ・ヤンソンを陰で支えた「ふたりの人物」

作品に影響を与えた「パートナー」たち
ムーミンミュージアム(フィンランド・タンペレ市)のムーミン像(撮影/横川浩子)

ムーミンがフィンランド出版されて2020年で75年。原作者トーベ・ヤンソンとも親交があり、ムーミンシリーズを長く担当してきた編集者・横川浩子氏が、ムーミン創作の背景にあったドラマを解説します。

ムーミンの誕生

「あんまり誰かを崇拝すると、本物の自由はえられないんだぜ」
スナフキン『ムーミン谷の仲間たち』より

フィンランドで出版されて75年。ムーミンの物語は、ヒトラーを揶揄する風刺画などを描いていたトーベ・ヤンソンが、長引く大戦の重苦しさから逃れようと自分のために書いたお話だった。

それまでは風刺画で狂言回し的に添えられていた小さな生きものにムーミントロールと名前が付けられ動きだす。原稿は『小さなトロールと大きな洪水』というタイトルで48ページほどの小冊子になり、駅の売店で販売された。

今や本だけではなくアニメーションやテーマパーク、各種グッズに至るまで人気者となったムーミンの、ささやかな船出である。

ムーミンシリーズで圧倒的な人気を誇るキャラクターと言えば、スナフキン! 旅と音楽と孤独を愛するスナフキンはテレビアニメの印象が強いこともあってか、アイドル並みにファンが多い。

実は、スナフキンにはモデルがいる。

 

作者トーベ・ヤンソンの婚約者だったアトス・ヴィルタネンだ。哲学者で新聞記者で政治家でもあったアトスは、権威から距離を置き、自由を追求した。トーベと腕を組み二人で大笑いする写真からは、心の底から信頼し合う様子が伝わってくる。

世に出る前のムーミン作品の可能性を見出し、出版に向けてトーベの気持ちを後押ししてくれたのは、彼だった。