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ノルマは年間500万円…研究費獲得に奔走する、大学教授の知られざる苦悩

学生1人につき、50万円も必要だ
大学教授と聞くと、「研究だけしている人」「一般社会とは無縁の変わり者」といったイメージを想起する人も多いかもしれない。しかし実際の大学教授は、研究費獲得や大学の運営会議などに、日々追われて生きている。そんな大学教授のリアルな生活を『大学教授が、「研究だけ」していると思ったら、大間違いだ!』から紹介したい。
 

年間のノルマは500万円

学部4年生が卒業論文を、あるいは大学院生が修士論文を作成するために、1人の学生が研究室で 1日8時間にわたって実験するとしよう。その1日の実験で、試料(サンプル)の作製や分析のために使った試薬の代金を2000円とする。すると、月に20日間で4万円、12カ月で48万円となる。

たとえば、1人の教員が指導する学生が、学部4年生が3名、大学院修士課程の学生1、2年生がそれぞれ3名、さらには博士課程の学生が1名いるとする。すると試薬代、言い換えると研究費を使う学生は、合計10名になる。1人の学生に48万円かかるから、10名で480万円。1年間に、ざっと500万円の研究費を調達しないといけない。

研究室にじーっと座っていても、お金は向こうから歩いてやってこない。しかも、研究費のほとんどは年度を繰り越せないので、毎年毎年、500万円の研究費を工面するのだ。

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救いは学生に給料を払う必要がないことだ。それどころか、学生は大学に学費(国立大学の場合、年間54万円)を払っている。また、研究室の家賃、電気代、水道代の請求はこない。私の給料は大学から支払われる。

私の父親がシャーリング業(注文に応じたサイズに鋼板を切断して売る商売)を1人で営んでいたので、私は働かないとっていけないことを十二分に知っている。その父に比べれば、私はずっと楽だったと思う。

ときどき、分析装置、たとえば分光光度計のランプの寿命がやって来て、切れる。測定装置、たとえばpHメータのガラス電極を、学生がうっかり破損してしまうこともある。いろんな装置が古くなり、修理や買い替えが迫ってくる。そこで年間500万円とは別に、年間100万円あるとうれしい。

研究費は、あればあるほどよいわけではない。多額のお金があると、使い切ることや関連書類を作成することに忙しくなって、頭が働かなくなることだってある。研究の推進力は、お金ではなく、アイデアや工夫だと言い切ってみせる「やせ我慢」が研究者には大切である。