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「上級国民」への異常バッシング、日本で「加害者叩き」がここまで過熱する理由

日本は「世間」が強すぎる

「家族も死刑」と大バッシング

2人が死亡、9人が重軽傷という重大な結果をひきおこした2019年4月19日の池袋暴走事故。10月8日、東京地裁での初公判で、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)に問われた被告人(当時87歳)は、「車に何らかの異常が生じた」と無罪を主張した。それが「反省していない」として、ネットやメディアでの大バッシングとなっている。

被告人の家族から相談を受けた、加害者家族支援団体WOH理事長の阿部恭子さんが、家族の様子をつぎのように明らかにしている。事故後、「ネット上では『死刑にすべき』といった厳しい批判や被告人への罵詈雑言で溢れ、被告人の自宅にはいやがらせの電話や手紙が届くようになった。バッシングは被告人だけにとどまらず、『家族も同罪』『家族も死刑』という書き込みもあった」、と(「現代ビジネス」2020年10月9日)。

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日本ではとくに重大犯罪がおかされた場合に、加害者のみならず、その家族に対しても「家族は責任をとれ」との苛烈なバッシングがおき、家族は「世間」への謝罪を強いられる。これを当然だと思う向きもあろう。しかし不思議なことに、欧米では加害者家族への苛烈なバッシングはほとんどみられない。

例えば、1998年に米アーカンソー州のミドルスクール(中学校)で銃乱射事件がおきたときに、加害少年の名前が公表されたために、母親のもとに全米から電話やダンボール2箱分の手紙が殺到した。日本のテレビの取材に実名・顔出しで応じた母親は、手紙の中身を問われて「全部励ましです」と答えたという。

驚くべきことだが、未成年者の凶悪犯罪である。日本だったら家族の実名・顔出しはゼッタイにありえないし、届く手紙はいやがらせか脅迫であろう。これが明らかな人権侵害や犯罪であっても、家族は沈黙を強いられる。いったいなぜそうなるのか?