狩野光信筆、高台寺蔵

菅義偉首相は「いろいろな意味で」豊臣秀吉になれるのか?

歴史上の類型から政権のパターンを予想

安倍首相と織田信長の共通項

安倍前首相が、「難病の治療に専念する」ために辞任記者会見を開いたのは8月28日であり、あっという間に2ヵ月あまりが経過した。

その後、自民党総裁選で勝者となった菅義偉氏が、9月16日に第99代首相として新内閣を発足させた。

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読者も周知のように、菅氏は安倍政権の官房長官として7年8ヵ月にわたって首相を支えてきた。強い自己主張をすることなく、女房役に徹してきたことから、安倍氏に比べて華やかさは無いが、おおよそ1ヵ月半の政権運営の優れた手腕を見ていると、実はかなりしたたかな逸材ではないかと思える。

安倍首相と戦国武将である織田信長とは似ているか? と聞かれれば多くの読者が首をかしげるかもしれない。確かに私も二人のキャラクターはかなり異なると思う。しかし次の3つは見過ごせない共通点である。

1. 良い家柄の生まれである。
2. 正攻法を基本とする
3. 理念型である。

1の家柄について安倍前首相は、岸信介が祖父、安倍晋太郎が父というだけではなく、日本の戦後を代表する大物政治家との縁戚関係を描いた家系図が話題になるほどの「ロイヤルファミリー」の出身である。

織田信長も、尾張の地方領主織田弾正忠家の当主・織田信秀の子として生まれ、その生涯を歩み始めた。信長は織田弾正忠家の家督を継いだ「殿様」である。

2だが、織田信長の直球型の戦略・改革はあえて述べる必要が無いかもしれない。海外との交流にも熱心で、弥助という黒人の家来もいたほどだし、「楽市・楽座」などの思いきった先進的改革もどんどん行った。

この点を比べると、率直に言って安倍氏がかなり見劣りするが、政策の進め方が「愚直なほどの直球」であったのは間違いない。また、特筆すべき外交手腕は、織田信長の海外に対する開放性と通じるものがある。さらに、海外の大物首脳と対等に付き合える感性は、「ロイヤルファミリー」の中で育ったおかげだと思える。

3の「正しいことは正しい」と正面から改革を進める「理念型」の姿勢は両者共通で、織田信長はその有無を言わさぬ手法へのブーメランともいわれる本能寺の変で亡くなった。

 

安倍首相も、「正論」を妥協をせずに推し進める手法が、5月22日の記事「安倍首相を叩く『アベノセイダーズ』が、民主主義を捨て全体主義に走る理由」で述べた反対派の強烈な反発を招いたことは否定できない。

織田信長の場合は「天下布武」、安倍首相の場合は「憲法是正」という理念の達成が究極の目標であったが、自分の代では完成できなかったことも共通している。