望まぬ妊娠などで、育てることができない女性が出産した新生児を、不妊治療の末に実子を諦めた夫婦が引き取り、「戸籍上も実子」として育てる特別養子縁組制度。現在公開中の映画『朝が来る』(河瀬直美監督)は、その特別養子縁組に関わった人たちの人間模様を深く掘り下げ、話題を集めている。

不妊症で子供が持てない夫婦は特別養子縁組を選択する。夫婦だけでなく、子供の実母の背景も丁寧に描かれている。(C)2020「朝が来る」Film Partners

この養子縁組制度には、少子化、親子問題、経済格差、地域格差、家や血縁に縛られる日本的価値観など、多くの問題を内包している。子を産む女性、他人が産んだ子供を育てる夫婦、当事者たちは何を思うのかー。

そのリアルな声を取材し、シリーズで紹介していきたいと思う。

実子を手放す、苦渋の選択の背景

望まない妊娠で生まれた新生児と、子を望む夫婦をつなぎ続けているのが、前団体の活動を入れ15年以上の活動実績があるNPO法人『Babyぽけっと』だ。映画『朝が来る』の制作にも協力している。代表の岡田卓子さんは「10年以上の活動実績で、480人以上の子供と養親をつないできました」と語る。まずは、子供を産む女性(実親)にはどのような女性が多いのか、その背景を伺った。

「想像を絶するような、困難を抱えた女性がほとんどです。幼いころから日常的に虐待を受けていたり、経済的な困窮を抱えているケースも多いです。いわゆる、夜の街で、働く方も多く、ネグレクトされ負の連鎖が代々続く女性など、さまざまな女性がうちを頼って連絡をくれます」(岡田さん)

茨城県土浦で行われた説明会。特別養子縁組を希望する5組のご夫婦と、すでに迎えられたご家族、さらに子供を託す実母が集まった。写真/FRaUweb

避妊に失敗することは誰にでも起こりうることだ。しかし、失敗と気づき緊急避妊薬を飲んだり、早期に妊娠に気付き中絶の選択をすれば出産までには至らない。日本では、母体保護法により堕胎できるのは妊娠22週未満(妊娠21週と6日まで)だ。岡田さんに助けを求めた女性たちはなぜ妊娠に気付かないのだろうか。

彼女たちの中には、食事を満足に摂っていなかったり、過度なストレスを抱えており、生理の有無に気付けない女性も多いです。生理不順は当たり前で、まさか妊娠してるなんて思わなかったというケースが目立ちます。私たちの団体は、全国3ヵ所に妊婦さんが出産まで生活する母子寮を運営していますが、所持金数百円という状態で、駆け込んでくる女性もたくさんいるのです」(岡田さん)

母子寮では個室が与えられ、スタッフが生活や身の回りの世話をするが、最初、ほとんどの女性たちは口が重いという。その背景には、性暴力で望まぬ妊娠をしたケースも多いからだ。

今回、岡田さんが代表を務める、NPO法人『Babyぽけっと』の説明会を取材することができた。この説明会は養親になりたい夫婦のための勉強会なのだが、会場にはこれから出産を迎える大きなお腹を抱えた女性たち(実親)がいた。自分が出産する子供がどれだけ望まれて新しい家族に迎えられるのか、それを実際に知るためにこの日彼女たちは参加したのだという。そんな彼女たちが、自分たちのいきさつを話してくれた。

※実親のお話は、プライバシー重視のため、お名前など個人情報がわからぬように配慮し表現しています。