〔PHOTO〕gettyimages

トランプ再選となるか…アメリカを陰謀論で覆った「QAnon」の力

自律分散型の陰謀論製造メカニズムとは

「あなたは大統領でしょ?」

2020年10月15日、中止になった第2回大統領ディベートの代わりにマイアミで行われたタウンホール・ミーティングで、ドナルド・トランプ大統領は、進行役でNBCの女性アンカーであるサヴァンナ・ガスリーから、次のように突っ込まれていた。

「あなたは大統領でしょ? なんでイカれた親戚の叔父さんみたいに、何でもかんでもリツイートするの? 全然理解できない!」

ガスリーがこういうのは、2019年にFBIによって国内テロを引き起こす陰謀論とみなされたQAnonに対して、トランプが頻繁に関連ツイートをリツイートし続けてきたからだ。そうすることで、むしろ彼らの活動を助長しているような素振りすら見せてきた。それがガスリーには理解し難かったからだ。

〔PHOTO〕gettyimages

QAnonは、当初はネットの中の新種の陰謀論くらいの位置づけだったのだが、あれよあれよという間にアメリカ政治のど真ん中に躍り出てきた。実際、QAnon信奉者の中には今年の選挙に立候補している人もいて、共和党の下院議員になるのが確実視されている人さえいる。FBIが国内テロの恐れありと捉えた言説の信奉者が連邦議会議員になるのでは、もはやただの言説とは言ってはいられない。過去におけるTea Party運動の台頭とその結果を思い起こせば、単なるお話から実際に政治の現場に現れることの差は甚大である。

実際、アメリカでは10月になって俄然、QAnonについて触れる報道が増えてきた。Facebook、YouTube、Twitter、TikTokなどは揃って、QAnonのような陰謀論を流布するコンテントやアカウントを停止させると公表している。いずれもQAnonが問題視されていることの現れだ。すでに単なるインターネット・カルチャーを超えて、保守運動としてオンラインからリアルの世界へと軸足を移しつつある。今では、アメリカだけでなく、欧州や南米、中東など、世界的に広がる運動となっている。現実のクソゲーぶりにクルセイダーとして立ち向かおうとしているQAnonは、今この瞬間にも自律分散型コミュニティとして変貌し続けている。

 

QAnonの正体

では、そのQAnonとはなにか。

QAnonはトランプを救世主と崇める集団として始まった。トランプとその仲間たちが、リベラル/民主党のエリートによる国際的な小児性愛売買組織を根絶やしにする秘密作戦を実行していると考える人たちのことだ。そうした秘密作戦の実行チームの一人である“Q”なる人物が、そのプロジェクトに関する秘密情報をメッセージボードである4chanや8kun(旧8chan)に投下(ドロップ)する。だが、その内容は暗号のような謎めいたものであり、その真意については、同志諸君、各自、自分の手で調べてみたまえ!、という感じで、積極的関与を求めてくる。

たとえば、トランプが10月1日にCovid-19に罹患し入院したときも、トランプ大統領がCovid-19にかかるはずがない、入院はウソで、実はグローバルな陰謀組織との最終決戦に備えてお隠れになったのだ!正義の鉄槌がくだされる日は近い!、と盛り上がっていた。そのような発想が何の迷いもなくできる人たちなのだ。