「ロックダウン再開」のドイツから日本に帰って感じたこと

そろそろ「作戦」を切り替える時期では
川口 マーン 惠美 プロフィール

ドイツはほとんど思考停止状態

ただ、こうやって、強制力のない「要請」を律儀に守っているのは、おそらく日本人だけだろう。他の国ではそうはいかない。

それは、現在、ドイツの多くの州で大量の警官が街をパトロールして、コロナ規則違反の人を取り締まり、罰金を取ったり、あるいは、揉み合いになったりしているのを見れば、よくわかる。

案の定、私より数日前に入国したドイツ人2人は、羽田からそしらぬ顔でさっさと電車に乗って渋谷に向かったという。その気になれば、もちろん何の問題もなく空港から電車にも乗れるし、国内線の飛行機のチケットも買える。もし、バレても、外国人なら社会的に村八分になる心配もないので、皆、おそらく「普通に」活動していると思う。

しかし、日本の外務省があれこれ指導やら要請はするものの監視をしないのは、政府がプライベートの領域にまで入り込んで、いろいろ干渉してくるよりもずっとマシだと、私個人としては思っている。

〔PHOTO〕Gettyimages

現在、ヨーロッパの国々で起こっているような強権発動が長く続くと、ろくなことにならない。現に、あちこちで反発が高まり、デモが頻発している。ただ、そうはいっても日本の場合、検査で陰性だったのに、なぜ14日も家にいなければならないのかという疑問はある。せいぜい1週間で良いのではないか。

一方、ドイツでは、コロナのニュースは毎日、あたかも大本営発表のような緊張度で流され、テレビをつければトップニュースはもちろん、ニュースの時間の半分ぐらいは延々とコロナの話だ。

特に28日、再び、ミニ版のロックダウンが掛かったので、大騒ぎになっている。飲食店は閉鎖、ホテルも宿泊禁止、映画館、ジム、コンサートホールなども全て閉鎖だ。

ただ、これほど国民生活に影響を及ぼすことが、政府の手によって、国民の代表である国会の頭越しに決められていくことに対して疑問の声が大きくなっている。おそらく司法が介入して、まもなく憲法違反でひっくり返すのではないかとも言われる。医師のグループで、政府のコロナ政策に反対しているところも増えてきた。

ドイツでは、コロナ患者用に用意されたベッドはまだ8000床近く空きがあるし、死者もほとんど増えていない。週に110万件も検査をしているので、陽性者は見つかるが、症状のない人が多い(日本も同じぐらいの規模で検査をすれば、おそらく陽性の人は劇的に増えるだろう)。

それでも、メルケル首相は、「第二次世界大戦後始まって以来の試練」、「できる限り家にいろ」、「クリスマスを祝えるかどうかは、国民の努力次第」などと、檄文のようなビデオメッセージを流しており、他のニュースがすっかり飛んでしまっている。

1週間後に迫ったアメリカ大統領選についての報道もこのところ一切ない。恐怖を煽るような政策は改めるべきだと提言している医師や心理学者たちの意見もまったく取り上げられない。ドイツはほとんど思考停止状態だ。

 

そのドイツのパニックニュースをそのまま伝えているのが日本のメディアなので、現在、日本の友人たちも、コロナの坩堝からの生還者である私を怖がっているらしく、いつもと違って、今回は誰も「いつ会える?」と言い出さない。