アジアのグーグルになれるか…吉本興業が考える、デジタル社会で勝ち抜く新戦略

【対談】吉本興業・大崎洋×坪田信貴

吉本興業の大崎洋会長が『ビリギャル』の著者で「坪田塾」を主宰する坪田信貴さんと出会ったのは、いまから約3年前、2017年11月29日のことだった。坪田と知己を得ていたキングコングの西野亮廣から「大崎さん、この人と会ったほうがええですよ」と勧められ、大崎会長はすぐに会い、意気投合したのだ。

二人の邂逅は、その後、吉本興業を新たな方向へと導いていく。DX化(デジタルトランスフォーメーション化)が一気に加速化していくのだ。

二人がこれからどんな新ビジネスを展開し、どこを目指そうとしているのか、語っていただいた。

※「崎」は山へんに立に可

大崎洋(おおさき・ひろし)1953年、大阪府生まれ。関西大学社会学部卒業。1978年、吉本興業株式会社入社。数々のタレントのマネージャーを担当した後、音楽・出版事業、スポーツマネジメント事業、デジタルコンテンツ事業、映画事業などの新規事業を立ち上げる。2009年、代表取締役社長、2018年、共同代表取締役社長CEO、2019年、代表取締役会長に就任
坪田信貴(つぼた・のぶたか)坪田塾塾長。これまでに1300人以上の子どもたちを個別指導し、心理学を駆使した学習法により、多くの生徒の偏差値を短期間で急激に上げることに定評がある。大企業の人材育成コンサルタント等も務め、起業家・経営者としての顔も持つ。著書に『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』『人間は9タイプ』『才能の正体』がある
 

「一目惚れでした」

――坪田さんと初めて会食されて、大崎会長は、「社外取締役に」と即決したわけですが、坪田さんのどこに惹かれたのですか。

大崎:ご本人を横にして言うのもなんですけど、もう瞬間に、大崎個人としても、吉本興業としても一目惚れでした。この人やったら、うちの社員たちもいろいろ相談したり、話したりできるん違うかなって。最先端のデジタル化とかビジネスがどうやとかではなくね。

坪田:僕はダウンタウンさんが大好きで、「ガキ使」とかをずっと見ていたので、当然、大崎さんのことは知ってました。会食はたぶん2時間ぐらいで、最後のほうで「吉本で何か一緒にやろうよ」、「たとえば、社外取締役」でと言われた。思わず、僕は「それが大崎さんのためになるんだったら」と即答してしまったんですね。

僕はずっと母子家庭で、小学校1年のときから父親と接していなくて、お父さん像というのがなかったんです。だけど、大崎さんと会って、あ、お父さんがこの人だったらすごくよかったのに、とそのとき思った。実際にお父さんだったら大変だとは思うんですけど(笑)。

――この3年間、社外取締役として、吉本の中で実際にやってきたのはどういったことですか。

坪田:吉本のこれまでの歴史を勉強させていただいて、キーワードになるものはなんだろうと思ったとき、タレントさんだな、と。タレントさんが新しいジャンルで活躍した瞬間に、吉本はそこで大きく根を張るということをずっとやってきた。DX化、デジタル化となったときに、たぶん、デジタルで活躍できるタレントさんをつくることがまず最も重要なんだろうと思いました。

ちょうど吉本に入ってすぐ、YouTuber「カジサック」さんがスタートするというタイミングで、梶原雄太さんに一緒にやりましょうとお声をかけさせていただいた。それでチームカジサックを手伝わせてもらったら、これが成功した。別にYouTubeでなくてもよくて、デジタル的なものの象徴として取り組んだわけですけど、これが登録者200万人を数えるまでになって、そのあともタレントさんたちが自分たちもやりたいと名乗りをあげてくれた。ロンブーの田村淳さんとかも相談してくださったり。

大崎:坪田さんにとっては、YouTuberみたいなことって、もう10年以上前から構想としてあったの?

坪田 そうですね。既得権益の塊であるマスメディアは選ばれた人たちの「村」だと思うんです。一方、インターネットの何がすごいかっていうと、「個人」がメディアを持ったことなんです。10年以上前には、データ転送量が少なすぎて、文字中心のブログくらいしかなかったけれど、いずれ、個人が動画のメディアを持つというのはわかっていた。だから、YouTubeが始まる前から、個人的に動画を撮っている人と連絡もとってましたし、塾や会社でそれを活用していこうとずっと研究していました。

――そんな中、吉本興業がYouTuber専門のマネジメントプロダクション「UUUM」と資本業務提携して業界内外を驚かせました。

坪田:僕は、吉本のデジタル化という観点からすると、最大のライバルはUUUMさんになると思っていた。2017年に社外取締役になったとき、業界分析みたいなのをめちゃめちゃしたら、正直、あのタイミングで言うとUUUMさんを潰すしかないと思ったんです。

あの当時、デジタルの広告収入の8割をUUUMさんが持っていたから。そのときはUUUMさんとの共存は無理だと思ってました。でも、カジサックさんが成功し、芸能人がバーっと参入してきて、その成功したタイミングで、向こうからもアクセスがあったり、もともと社長の鎌田和樹さんとは友人だったこともあって、資本業務提携したわけです。