大ヒット『鬼滅の刃』、若者に刺さりまくった「炭治郎の一言」をご存じか?

「どうでもいい」を超えるもの
森島 豊 プロフィール

考えないのは学がないからではない。意見を言わないのは問題意識がないのではない。コミュ力が低いのは人格に問題があるからではない。理由は、それが彼女を守る術(すべ)だからだ。誰が教えたのでもない。彼女の人生が見つけた答えだ。同時に、多くの若者に自己認識を与える瞬間がここにあったと思える。

「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ」

漫画は現代人が抱えるこの問題に向き合う。もしかすると、本当の鬼(たたかうべき相手)はこの「どうでもいい」という虚無的な空気かもしれない。主人公の炭治郎は、不条理が産み出した一人の人間のあり方に向き合う。シンプルに、的確に、爽やかに答える。

「この世にどうでもいいことなんて無いと思うよ」

カナヲとのこの対話が多くの読者の心に響いていることはネットの書き込みからも明らかだ。読者は自己に重ねながら共感し、「どうでもいいことなんて無い」と言える世界に期待している。

〔PHOTO〕iStock
 

重要なことは、漫画では「どうでもいいことなんて無い」と言える理由を語らずに展開することだ。なぜ、どうでもいいことなんて無いと言えるのか。その根拠はどこにあるのか。その答えは語らない。

若い学生たちに触れていて気づかされることがある。失望の経験を重ねた世代に言葉は届かない。正確に言えば、言葉だけでは心に届かない。ロストジェネレーションに言葉は求められていない。フィーリングとイメージを重んじるこの世代に必要なのは「本気度」だ。つねに問われる。「まじで?」。

現代人が求めているのは、失敗してもいい、間違うこともある、それでも「見捨てない」「投げ出さない」という心との出会いかもしれない。なぜならば、裏切られたことの多い世代だからだ。時代に、国家に、政治に、経済に、教育に、家族に、仲間に、どこかで失望を味わったことがある。