劇場版『鬼滅の刃』が興収100億円超え!でも映画館の経営がヤバい理由

シネコンが抱える「ジレンマ」とは?
武井 保之 プロフィール

そうしたなか、現状では、ライト層である若い世代を取り込める邦画新作頼みとなる状況が続く。幸い、社会的なトピックや流行に感度の高い同層は、フットワークが軽く、おもしろそうな作品さえあれば映画館に向かう。コロナを乗り切るまで、今回のようなヒットをきっかけに、若い世代を中心に世の中の関心を映画館に向けさせ、映画を生活の一部にいかに溶け込ませていくか、に業界をあげて取り組む必要があるだろう。

ターニングポイントは「春休み映画」

厳しい興行が続くシネコンに対して大高氏は

「少し息がつける状態になったとは言える。それも、持続性のある興行が見えてきたことが大きい。『鬼滅の刃』のここまでの大ヒットは、次につながる可能性のある、大きな希望になったと思う。ただ、この1本だけでは、来年以降の先行きは見通せない。年間興収で40%台を占める洋画の公開が、どの時点で本格的に上映を再開するかが問題だ。ここが弱いと全体は活性化しない。映画館で観る映画の醍醐味、素晴らしさが、ジャンルを超えた作品への関心に少しでも広がってほしい」

と力を込める。

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幸いこれまでのところ映画館からクラスターは発生していない。映画館内は換気が行き届いているが、それ以上に今回の空前のヒットによって足を運ぶ人たちが多くなることで、安全な場所であることが社会的により広く認知されると期待される。それが無意識のうちにコロナへの不安を払拭し、映画館へ行くことのハードルを下げる効果もあるに違いない。

この先、まずは来年の春休み映画として洋画新作の公開が控えているが、そのタイミングで年配層を含む幅広い層が劇場に足を運ぶきっかけをつくり、映画界復興の出発点にできるか。

数十回上映するという今回のシネコンのスクリーンシフトは、ビッグタイトルのヒット促進ならびに利益最大化への新たな事例となった。コロナは現在も一進一退の状況が続くが、いまの勢いと歴史的ヒットを生み出した知見をひとつの足がかりに、業界の足元を支えるシネコンが先頭に立って、どんな状況においても映画界が前に進む手立てを考えていくことが期待される。

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