劇場版『鬼滅の刃』が興収100億円超え!でも映画館の経営がヤバい理由

シネコンが抱える「ジレンマ」とは?
武井 保之 プロフィール

観客側に視線を移すと、前後左右が空席となる50%販売のほうがコロナ対策への安心感があり、鑑賞においても快適であることから、こちらを選ぶ人が多くなることも考えられる。シネコンによっては、平日と週末で50%販売と全席販売を切り替えているところもあるが、コロナ禍の状況が続く限り、“1席空け”へのニーズは高そうだ。

すでに観客が“隣席空き”に慣れていることもあり、シネコン側の思惑とは別のところで、この先こちらがデフォルトになっていく可能性も否定できないだろう。

「コロナ不安」を払拭できるか

今回の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の想定以上のメガヒットに歓喜する映画界だが、「1日に40回以上も上映する」といった前代未聞のスクリーンシフトによってその一翼を担ったシネコンにとっても、コロナ危機の真っ只中にある経営を救われたことは間違いない。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
 

このムーブメントがどこまで続くかは未知数だが、一方でこの1作だけで今年のコロナによるダメージをカバーすることができるかと言えば、そうではない。苦境が続いていることに変わりはなく、それほどまでに今年の情勢は厳しい。

昨年の年間興収は過去最高となる2611億円だったが、今年は好調だった7〜8月の夏興行ですら前年比30〜40%ほど。映画シーンのヒット作の大半を占める東宝の21年第2四半期決算では、今年3〜8月の興収実績(東宝映画営業部の配給作品)は前年比31.4%(165.8億円)となり、1〜9月までの数字でも昨年の半分ほどになるようだ。

映画界全体では、9〜10月にヒット作も続いているが、今年の年間興収は、前年比5割程度まで回復できればいいほうだろう。そこまでにも届かないとの見方のほうが強くなっている。

この苦境の根本的な打開には、コロナの収束が大きく関わってくる。そもそも劇場での視聴を好む固定映画ファンには年配層が多いが、コロナへの不安から客足がほとんど戻っていない。

また、同層にファンが多いハリウッド大作を中心にした洋画新作は、コロナによる社会情勢の悪化のためアメリカ本国での公開がままならず、日本を含めた諸外国で軒並み公開延期となっている。そのため、シネコンに洋画がゼロとなることで年配層の観たい作品がなく、ますます客足が遠のくという負のスパイラルが続いている。

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