「大阪都構想」の決定的なダメっぷり…大阪の「元副知事」が実態を証言する

二重行政は「幻想」である
松本 創 プロフィール

現役職員たちは、維新が「改革」と称して行ってきた公共施設や組織の統廃合に疑問を投げかける。たとえば、中小企業の債務を保証し、融資を円滑に受けられるようにする公益法人の信用保証協会。「大阪市内には中小零細の事業所が多く、身近な市の信用保証協会が専門的に対応してきました。しかし府の協会と一本化されたために優先度が低くなり、コロナ禍で経営環境の厳しい中、融資手続きが遅くなっている」(府の福祉系職員、40代)。

市立住吉市民病院は、もともと建て替える計画だったのが、橋下氏の方針で一転、近隣の府立医療センターに機能を統合し、廃止された。「二重行政解消の象徴として維新が進めましたが、統合にかかる費用は建て替えよりも膨らんだうえ、跡地への民間病院公募も失敗。周産期・小児医療の拠点病院だったのが、現在は午前中の外来だけの小さな診療所になっています。当初から医師会や住民の反対が強く、地元では今も運動が続いています」(市の保健医療系職員、50代)。

「都構想」が実現すれば、この手の統廃合がさらに進む可能性は極めて高い。なのに、なぜ維新の二重行政批判は受け入れられるのか。先の府職員は言う。

「公共サービスや施設は無駄だ、行政は非効率で、税金の無駄使いばかりしているという思想が、郵政民営化の頃から20年にわたって続いてきた。そのイメージだけで判断されている気がします」

 

市の廃止・解体こそ壮大な無駄

維新のパンフレットで、無駄な二重行政の筆頭に挙がっているのは、府のりんくうゲートタワービル(泉佐野市、1996年竣工。高さ256.1m)と、市のワールドトレードセンタービル(住之江区、1995年竣工。高さ256m。通称WTC)。維新の首長らが常々、二重行政の象徴として語ってきた「定番」の批判だ。「府と市がビルの高さを競い合い、建設費が膨らんだ。わずか10cm差で府が勝ったが、ともに破綻。これこそ府市合わせ、税金の無駄使いの象徴だ」という話を一度は聞いたことがあるかもしれない。

WTC〔PHOTO〕WikimediaCommons

だが、これは、「同種の施設が二つある」という意味での二重行政にすら当たらないと府市職員らは指摘する。りんくうビルは、関西国際空港(1994年開港)の玄関口となる「りんくうタウン」構想の一環で、一方のWTCビルは市が臨海部に新都心整備を目指した「テクノポート大阪」計画により建設された。いずれもバブル期に、それぞれ単独で行った開発投資の失敗だという。

「建設目的や機能も異なり、二つ建てたから失敗したわけではありません。一つでも大きな失敗です。バブル景気に踊り、甘い見通しで過大な投資をした政策の誤りは反省しないといけませんが、二重行政とは関係ない。仮に当時、首長が一人だったら、過大投資を防げたのでしょうか」

小西氏はそう語り、バブル崩壊後に府が進めた行革の歩みを振り返る。大規模事業の凍結や見直しに着手したのは、横山ノック知事時代の1996年。続く太田房江知事時代の1998年に財政再建プログラムを策定し、2008年に橋下氏が就任すると、小西氏が改革PTの先頭に立ち、事業や施設、補助金を徹底的に見直した。国際児童文学館や青少年会館の廃止・統合、私学助成金や文化団体の補助金カットなどは、当時大きな反発を招いた。