根っこに「恥ずかしい」があるんです

市川さんは、撮影のときも、インタビューのときも、一瞬真面目モードに入ったかと思うと、その真面目な自分に照れて、「ヒャハハ」なんて笑い出したりおどけたり。表情や声色に、ザラザラやデコボコやふさふさ、フワフワ、すべすべなど、独特の質感を感じさせてくれる人である。その質感が心地いいのは、天然素材だからなのだろう。そうして、「もともとツルツルの会話ができないんです(笑)。その人の生地を感じたい」と、また“らしい”表現をする。

「私の根っこには、常に“恥ずかしい”っていう気持ちがあります。だから、恥ずかしがっている人の方が安心できるんですよね。なんとなくわかるから。お芝居って、冷静に考えたら、すごく恥ずかしいことをしているじゃないですか。初対面でいきなり家族を演じるなんて、絶対に恥ずかしいし緊張する」でもみんなそんな気持ちを見せずに、「よーいスタート」で、いろんなテンションやいろんな間柄になるんです。時々、目が醒めたみたいにびっくりする時があります。よく考えてみると不思議な仕事だなぁって」

普段の市川さんは、世間話すら苦手らしい。

「『今日はいい天気だね』ぐらいは言えるかもしれないけど、『最近どう?』って聞かれたら、『何が?』ってなっちゃう(笑)。でも、お芝居の現場って、本番以外のコミュニケーションや距離感もすごく大事だと思います。たとえしゃべらなくても、どういう風にその場にいるか。毎現場、人や役によりますね。そう言えば、いつだったか、『人って、絶対に見ててくれるんだな』って思ったんです。取り繕って、ツルツルの会話をしていても、その人の持つ質感って絶対伝わってしまうように思う。明るくておしゃべりなのに、『緊張してるな』とか(笑)。どうせバレるなら、最初から、『不器用です』『人見知りです』って雰囲気を漂わせてくれた方が、何かを掴むスピードは早い気がします。あくまで私は、ですけど(笑)」

撮影/篠塚ようこ