「正直な人」は信頼できると思った

最初に撮影した家族3人のシーンは、市川さん曰く「まだ事件のことから遠くて、誰もが無邪気でいられた、和やかな時間」。詩織ちゃんは、撮影2日目にはすっかり星野さんに懐き、数週間後に撮影された動物園のシーンでは、ずっと星野さんとキャッキャキャッキャとじゃれあっていた。

「その時、『やっぱり、初日の星野さんは相当人見知りしてたんだなぁ』って。だからこそ、2人の関係が、より微笑ましく感じられました(笑)。そして、だからこそ私は星野さんのことを人として信頼できるなと思いました。だって、正直じゃないですか」

人として信用できるかどうかを判断する基準が、正直であるかないか――。最初に人間関係を“網目”にたとえたのと同様、それは、とても市川さんらしい考えのように思えた。誰かに押し付けられた考えでなく、生きる中自分で身につけた判断力。
「人の見方一つとっても、市川さんは自分らしさを大事にしている感じがします」と言うと、「アハハ、そういう顔してますか?」と照れたように微笑んで、「でも、みんな自分らしさを大切にしてるんじゃないですか?」と続けた。“自分らしさ”なんてことさら意識したことのない人特有の、少女みたいに無防備な瞳がキラキラ輝く。

撮影/篠塚ようこ

「あ、でも一つ思ったことがあります! 去年かな? 世代の違う初対面の何人かで会話していたときに、下の世代の人は、初対面でもコミュニケーションがとても滑らかだったんです。そこにいるみんなの何気ない言葉に、テレビで観る芸人さんのようにさっとツッコミを入れたりして。明るくて積極的な雰囲気を醸し出していたけれど、私にはその人が本当はすごく人見知りしているように見えたんです。一方で、私よりも上の世代のある人は、側から見た人がすぐにわかるくらい明らかに人見知りしていて。

それがとっても印象的で、しばらくしてから、ふと『不器用な人の方が、実はスマートなんじゃない?』なんて思ったことがありました。年下の人は、その場の空気をよくしようと気を使って話してくれたのだけれど、そこにその人自身がいる感じがしなかったというか……。もしかしたら、その年上の人は、『自分はなんでうまく人とコミュニケーションが取れないんだろう?』って悩む人かもしれない。でも、なんだか私は、その人の方が一緒にいて安心したんです。なんでだろう? その人の心根というか……温度が感じられたからかなぁ……?」