GAFAを生み出すなど産業のデジタル化でリードする米国、権威主義のパワーで国家のデジタル化にまい進する中国。それに対して「デジタル後進国」である日本は大きく遅れをとっている。
しかし、デジタル化の進展による世界の変容で、苦境に陥っている日本のテレビや新聞、そして銀行や証券会社に、グローバルに飛躍する意外なチャンスが訪れるかもしれない――そんなシナリオがいま語られ始めていることをご存じだろうか。
今回、経営共創基盤(IGPI)マネージングディレクターで、新著『デジタルテクノロジーと国際政治の力学』でデジタル化で変容する世界の最前線を描いた塩野誠氏と、話題作『よこどり 小説メガバンク人事抗争』で金融のデジタル化を独自の切り口で描いた作家の小野一起氏が緊急対談で語り明かした。
小野 いま菅義偉政権は強力なパワーで政府の行政手続きのオンライン化を急ピッチで進めようとしています。しかし、仮にその通りに事が運んだとしても、日本の民間企業が成長しないのでは日本のデジタル化が成功したとはいえないでしょう。日本の企業は、どんな成長イメージを描くべきなのでしょうか。
塩野 まず、小野さんの出身母体で専門でもあるメディアについて考えてみましょう。世の中には、これだけフェイクニュースが広がっているわけです。これは民主主義への挑戦でもあります。皆が何を信じたら良いのかわからなくなっています。そこで、どう信頼できるメディアを作り上げるのかが重要な問題です。確かな情報が提供されるメディアが必要です。これはジョセフ・ナイの言うソフトパワーになります。
端的に言えば、NHKはBBCになれないのか、という問いになります。
NHKにはお金もあって、人もいます。それに一定のグローバル性もあります。アジアのBBCを目指してほしいです。
日本の新聞やテレビにも可能性はあるのです。