「どうして君たちは政権を支持するの?」と尋ねられても、若者たちは、おそらくは即答できない。往々にして答えを濁してしまうだろう。
だからといって「とくに確たる根拠や信念があるわけではないが、ただ少数派になるのを嫌がり、付和雷同的に支持している」わけではない。彼らがそのような態度を見せるのは、どちらかといえば「放っておいてほしい」からではないだろうか。
数年前から、野党やリベラル派を中心として、若者に政治的問題意識を訴求する手段として「ラップ」が使われ始めている。若者になじみ深い文化を取り入れれば、関心と親しみを向けてくれるはずだという狙いがあってのことだ。その端緒はおそらく、2016年に結成されて2018年まで活動した学生左派運動「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)」にあるだろう。
だが「なんとなく若者が好んでいるカルチャーだから」という理由で、SEALDsのようなインテリ・リベラル学生たちから借り物の方法論としてラップを導入したところで、大多数の若者には響かない。
たとえば同じラップでも、いま若者たちの間で爆発的な人気を誇るHIPHOPユニット「BADHOP」の楽曲の歌詞を1バースでも読めば、多くの若者たちが政権あるいは自民党のポリシーを支持している背景が見えてくるはずだ。「育ちのよいインテリ・リベラル学生が活用していたから、政権批判をラップにすれば若者に受けるはず」という程度の理解では、なにも見えてこない。