アルフォンス・ラヴランによるマラリア原虫のスケッチ

人類最古の感染症「マラリア」の病原体はこうして見つかった

科学 今日はこんな日

"サイエンス365日" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

世界三大感染症

1880年の今日、フランスの医師アルフォンス・ラヴラン(Charles Louis Alphonse Laveran、1845-1922)によって、はじめてマラリア原虫が発見されました。

マラリアは世界でもっとも古くから知られており、かつ、人類にとって脅威であり続けている病気の一つです。現在でも年間数億人が感染し、何十万人という死者を出すマラリアは、結核、エイズと並んで、世界の三大感染症に数えられています。

 

日本でも「瘧(おこり)」の名前で8世紀以前から知られており、一時代を築いた武将・平清盛の死因でもあったとされています。近代でも、1950年前後までマラリア原虫が土着しており、毎年多くの感染者を出していました。

かつて人々は、沼地のよどんだ大気を吸い込んでしまうことによってマラリアに感染する、つまりマラリアの感染源は空気であると考えていました。そして、沼地に近づかないといった予防策しか取れず、治療法もわかりませんでした。「マラリア」という名前も、「悪い空気」という意味のイタリア語に由来しています。

実際には、マラリアは後述する蚊の一種が媒介することで伝染している Photo by iStock

当初は理解されなかった大発見

アルフォンス・ラヴランも、マラリアの原因は空気にあると考えていた人物の一人でした。彼は1878年からマラリアが流行しているアルジェリアの地域に行き、空気の中の何がマラリアを発症させるのか解明を試みていました。

2年間めぼしい結果を得られないまま研究を続けていたラヴランのもとを、1880年の11月6日、一人の若い兵士が訪ねました。その兵士はマラリアにかかり、特効薬のキニーネを飲んでも体の不調が治らないというのです。ラヴランはそれがキニーネの強い副作用によるのか、それともキニーネの効きが悪いのかわかりませんでした。

アルフォンス・ラヴラン Photo by Getty Images

そのため、ひとまず兵士の血液を採取し顕微鏡で観察したところ、何やら運動する三日月のような形の物体を発見し、驚愕します。そして、これがマラリアの病原であるという内容の論文を発表しました。

当初、ラヴランの発表は各国の研究者たちに冷笑されていました。赤血球と見間違えたとか、安物の顕微鏡を使っているからだとか言われていたといいます。特にマラリア研究が盛んであったイタリア人からは全く相手にされませんでした。

しかし、1898年にイギリスの医学者ロナルド・ロス(Ronald Ross、1857-1932)が、ハマダラカという蚊がマラリア原虫を伝染させることを明らかにしました。これにより、ラヴランの正しさも世界的に認められました。ラヴランは、ロスから5年後の1907年に、ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。