ALS(筋萎縮性側索硬化症)という言葉を検索すると「感覚があるままに体が動かなくなる病気」という説明が多くあります。もう少し詳しい説明を探すと「筋肉が動かなくなってしまう」という表記がなされています。ではこの「感覚があるままに動かなくなる」という状態はどんな感覚なのか? 足と手について2回にわたりお伝えしていきましたが、今回は私の現在での声や呼吸器系のお話をしたいと思います。

2019年9月にALSに罹患していることを公表した津久井教生さん。ニャンちゅうをはじめとしたキャラクターの声でおなじみの人気声優であり、音楽家でもあり、舞台にもたつ役者でもあります。津久井さんが最初に違和感を抱いたのは「足があがりにくい」「突然転ぶ」ということでした。歩くのが困難になり、手は大丈夫と思いながら、右手も動きにくくなり、ピアノやギターを弾くことができなくなっていきました。それでも声優としての活動は現在も続けています。声優にとってのもっとも大切な声のこと、呼吸器のことを、いま改めて綴っていただきます。
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相棒・ニャンちゅうと津久井さん。この写真は2019年11月のもので、ピアノを弾けたのはこれが最後だったという 写真提供/津久井教生

呼吸器系にも症状は出ていたのかもしれない

2019年3月くらいから足の「ピクピク」を感じると同時に筋肉の減少を感じ始め、何もないところで転んだりして異変を感じていましたが、前回お伝えしたように、当初上肢(手)には全く異変は感じていませんでした。では声や呼吸器系はどうだったのでしょうか? 

実は2019年3月、ほとんど声が出なくなった時があったのです。

2019年1月から3月まで、私は連続で舞台に出演していました。2月までは大きな舞台でも当然のように声を響かせて台詞を客席に届けていたのですが、3月になると声が割れてきて、しっかりとした音声が出にくくなってきました。よく声枯れなどで起こるように、音が低くなって割れた感じになり、キーもそのままの酷いハスキ-ボイスと思っていただければわかりやすかと思います。

本来であれば「大事な声が出ない!」と驚くところでもあるのですが、私はニャンちゅうとまではいかずとも、基本的にハスキーボイスなのでした。そのうえに酷い花粉症で、毎年「3月は津久井の声はいないものと思ってください。」と公言するくらいに「鼻声になる以上の声の出しにくさ」を経験してきたのです。確かに私自身も、そして周囲からも「今年は酷いですね」と言われるくらいの声の劣化でした。でもその声でもしっかりと発声することで言葉は伝わります。またお仕事のキャラクターも一部を除いて「ハスキーな発声部分を利用」しての演じ方でしたので、困る事はありませんでした。唯一ストレート系のナレーションの役だけは避けてもらっていました。

「今年は例年より花粉が酷いんだな」と思い込んでしまっていたのです。