当然の権利なのに、ギリギリで覆ってきた負の歴史

様々理由を挙げたが、何より重要なのは、緊急避妊薬に女性たちが望む形でアクセスできることは【当たり前の健康の権利】であるということだ。

緊急避妊薬が対面診療やオンライン診療に加えて薬局にあること、アクセスの選択を自分でできること。そして、何より子供産むのか産まないのか、産むなら何人、どの間隔で産むのかを正しい知識と医療へのアクセスを持って女性本人が決められること。これは、25年も前に国連人口開発会議(ICPD)で決められた、当然に守られるべき健康であり権利であるということだ。

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WHOは、日本で未だに未承認の120時間以内に服用すれば避妊成功率が高い緊急避妊薬『エラワン(ウリプリスタル酢酸)』も含め、これらの薬は健康を保つために必要不可欠で、誰もがアクセスできる価格で提供されるべきであると「必須医薬品リスト」に加えている。

さらに、「意図しない妊娠のリスクを抱えたすべての女性および少女には、緊急避妊にアクセスする権利があり、緊急避妊の複数の手段は、国内のあらゆる家族計画プログラムに常に含まれねばならない」と声明を出しているほど、緊急避妊薬は健康を守る上で欠かせない薬といえるのだ。

とはいえ、日本では現状は、政府が「方針を固めた」に過ぎない。販売形態や価格がどうなっていくのか、そもそも本当に実現するのか、今後も注視が必要な状況だ。というよりむしろ、ここからが本当の正念場といえるだろう。

実は経口避妊薬(低用量ピルなど)も、幾度も「承認」の文字がチラついては見送りということが、私の調べた限りでは過去に少なくとも6回あった。その理由は様々だが、最終決定の直前に重要なポジションの人が反対の声をあげたり、新たな不安要素が持ち上がったり……。承認を前提とした議会が前日に突如中止された際は、当時の首相夫人が性の風紀の乱れを懸念し反対したから、とも言われている。

実際にこの原稿を仕上げた後の10月21日夜に、日本産婦人科医会が反対意見を表明したというBuzzu Feed Japan Medicalの岩永直子さんの記事によると、日本産婦人科医会による記者懇談会の場で、木下勝之会長が「私たちは(薬局販売は)まだ時期として早いと思って、基本的には賛成しておりません」と改めて薬局での処方箋なしでの販売に反対意見を述べたというのだ。気持ちよく進むはずはないと思いながらも、またも…。「悲報すぎる」とTwitterにコメントをすぐに出してしまった。

この問題に私自身が取り組みつくづく感じるのが、自分のからだを守れるか否か、その大部分は、政治や力を持つ様々な人物の利害関係やパワーバランスと強く結びついていることだ。

そう書くと、なんともいえない無力感に襲われるが、実はそれでうなだれる必要もないと思っている。というのも、私たちひとりひとりの声は確実に、世の中の風潮をまさに今、変えているからだ。

乗り越えようとするたび、大きな壁が立ちふさがる。緊急避妊薬だけでなく、女性医療の問題は日本では進まない問題が多すぎる。photo/Getty Images