なぜ緊急避妊薬が必要? 5つの求める理由

しかし、SNSなどのコメントを見ると、「緊急避妊薬が簡単に入手できると性が乱れる」「避妊を拒否する男性が逆に増える」「緊急避妊薬を免罪符に性を強要されそう」「まず、コンドーム使えば済むことでは」「体に悪そう」と言った世論も聞こえてくる。

今まで、幾度か書かせていただいたことであるが、改めて緊急避妊薬を薬局で入手できることがなぜ必要なのかお伝えたいと思う。導入すべき理由は多岐にわたるが、大きなポイントとしては5つ。わかりやすく項目ごとに整理してみよう。

1:【例え避妊をしていても、妊娠することはある】
緊急避妊薬の議論の中で、もっともよくいただくコメントに「性教育をして知識があれば必要にならないはず」「コンドームやピルで避妊をしていればいらないはず」というものがある。

まず、性教育と緊急避妊薬は、どちらが先というものではなく、実際に健康を守るには、どちらも同時に進められることが必要だ。医療へのアクセスがなければ、せっかくの知識も使えない。その上で、避妊をしたとしても、失敗のリスクがあることも知ってほしい。

一般的な使用の場合(破損や失敗、飲み忘れ等のリスクを含める)で、100人の女性が1年間その避妊法を使ったとして、低用量ピルで9人、コンドームで18人が妊娠すると言われている。すなわち、どんなに避妊に気をつけているカップルでも夫婦でも、妊娠する可能性はあり、緊急避妊薬は必要になり得る薬なのだ。

また、緊急避妊薬へのアクセスがよくなることで「コンドームの使用が減るのでは」という意見も数多く耳にするが、WHOは「緊急避妊薬へのアクセスが良くなることによって、性的避妊リスク行動は増加しない」と伝えている。

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2:【性暴力の被害者の妊娠不安を早急に開放するために】
日本では性暴力被害にあった際、各都道府県に設置されたワンストップセンターや警察にアクセスすることで、無料で緊急避妊薬をもらうことができる。

しかし、内閣府の資料では、レイプ被害にあって医療機関に相談できた女性は2.1%、警察に相談できた人は2.8%に留まっている。さらに、電話相談にたどり着けた人の内訳を見ても、緊急避妊薬が有効となる72時間以内に相談できた人は14.7%にすぎない。この数字を見れば、被害にあってすぐ公的機関に相談することがどれだけ難しいか分かるはずだし、緊急避妊薬が無料で警察や病院に置いてあるだけでは事足りないことはあまりに明白だ。

時間が経つほど、緊急避妊薬の効果は期待できなくなり、妊娠のリスクも大きくなる。まずは緊急避妊薬に安心安全な形で辿り着き、妊娠不安を可能な限りで減らしてから、被害で負った心、体のケアに向き合いたいという人もいる。そういった女性たちに向き合える薬であるためにも、アクセスがよくなることは重要なのだ。

性暴力の被害者にとって、緊急避妊薬は必要不可欠だ。恐怖と不安の中、誰もが産婦人科に行けるとは限らないのに……。photo/Getty Images

3:【産婦人科が少ない地域、休日でも必要なときはある】
「長期休暇中、避妊に失敗したとき緊急避妊薬を処方できる病院を探すのが大変だった(20代女性)」「以前婦人科がやっていない祝日に避妊に失敗し、他の県まで3時間かけて処方してもらったことがある(20代女性)」「私が住んでいる地域では産婦人科が少ない。72時間という制限があると、自力ではたどり着けないと思えて怖くなる(20代女性)」「緊急避妊薬が必要なとき、休日だったため、処方を受けるまでに一日駆け回りました(40代女性)」これらは以前、緊急避妊薬のアクセスに関する調査を行った際、届いた声だ。

また、医療従事者からはこんな声も届いた。
「現在、夜間診療を行える産婦人科では、医師や助産師看護師不足の中で分娩を扱いながら対応しています。緊急避妊薬をできるだけ早く内服して欲しいと思いながらも、分娩などが入ると対応しきれず、翌日の外来受診を勧めざるを得ない現状があります(40代女性)」

産婦人科医の不足が日本各地で叫ばれる中、病院が遠く、車がないと診察を受けられない人がいる。また、厚労省が緊急避妊薬の処方が可能な医療機関や研修を受けた薬剤師をウェブ上で公開したり、「ピルにゃん」という緊急避妊薬の日曜祝日の候補になる医療機関をまとめたサイトも立ち上がったりするほど、病院探しは難しい。もし、薬局でも入手が可能になれば、時間制限もある中でのこういった困難は大幅に軽減されるはずだ。