10月7日夜、Twitterでは「緊急避妊薬」がトレンド入りをした。

きっかけは、「政府は7日、性交直後の服用で妊娠を防ぐ『緊急避妊薬』について、医師の処方箋がなくても薬局で購入できるようにする方針を固めた」という突然のニュースだった。その後もこの話題は、SNSで話題になり、今までこの問題にあまり関心がなかったテレビメディアなども特集を組んで取り上げるようになってきている。

しかし、好転ムードに水を差すように、10月21日夜に、日本産婦人科医会の木下勝之会長が記者懇談会の会見で、産婦人科医の指導が必要で緊急避妊薬の薬局購入に反対する発言をしたという一報が流れた。いいニュースがあると思うとバッドニュースが水を差す……、こういったことが繰り返されてきている緊急避妊薬問題。

これまで緊急避妊薬のOTC化の必要性を訴えてきた福田和子さんに、緊急避妊薬がなぜ必要で、どんな議論が展開され続けているのか、改めて整理して伝えてもらった。

橋本聖子男女共同参画担当相は10月9日に「緊急避妊薬の薬局市販化を進めていく方針があることを発表した。photo/Getty Images

2年半戦ってきた私が今思う、緊急避妊薬問題

「緊急避妊薬(通称アフターピル )とは、妊娠可能性のある性行為からなるべく早く、72時間以内に服用することで、高い確率で妊娠を阻止できる薬だ。WHOは、日常的に使うホルモン避妊法を使用できない女性を含め、全ての女性が安全に効果的に使用できる薬として、服用前後の診察は不要、特にコロナ禍では薬局での提供を推奨している。実際、世界では約90ヶ国で数百円から数千円程度で薬局入手が可能だ。しかし、現在日本では処方箋が必要で、価格も1万円前後と高額だ」

この説明を、私は何度口に、文字にしてきたことだろうか。日本での性と生殖に関する健康と権利の実現のため活動すること2年半、この話をするたび、書くたび、悲しくなるほど変わらない現実が常に私の目の前に大きな壁のように立ちふさがっていた。それが今まさに、変化の時を迎えようとしている。

これまでも薬局でのアクセスが検討された議論はあった。私がもっとも忘れられないのは2017年の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」だ。このとき、「緊急避妊薬のOTC化」について、国民の意見を聞くパブリックコメントを募集した。OTCとは、Over The Counter:オーバー・ザ・カウンターの略語で、薬剤師による対面販売を意味する言葉だ。このパブリックコメントでは、1ヵ月間の募集期間で集まった全348件中、賛成が320件、反対は28件で、なんと9割が賛成の意を示した。それにも関わらず、「時期尚早」で緊急避妊薬の薬局での提供は否決された

他にも、緊急避妊薬は例外として初診からのオンライン診療を認めるか否かという議論では、結果的には承認されたものの、「薬剤師の前で薬を飲むべき」という『面前内服』や他国ではやっているところがない「妊娠が回避できたか確認するために『3週間後に産婦人科を受診』」など、気になる条件が付いたのだ。ちなみに、WHO(世界保健機関)は、「緊急避妊薬を医学的管理下におく必要はない薬」とし、国際産婦人科連合も、「医師によるスクリーニングや後日のフォローアップは基本的に不要」としている。

だからこそ、10月7日の「政府が緊急避妊薬の薬局購入の方針を固めた」という一報を聞いたときは、ただただ驚くばかりだった。そして、Twitterに次々と溢れる薬局入手を歓迎する声に、これまでどれだけの人たちが苦しい思いをしてきたのか、アクセス改善を求めてきたのか、そしてこの変化がどれだけ女性たちにとって安心と安全を実現する喜ばしいことであるのか、改めて実感するばかりだった。

現在世界約90ヵ国では薬局での入手が可能。国のサポートで無料で手に入る国もある photo/Getty Images