Photo by S Getzin, University of Göttingen

ついに解明!植物が作り出す奇妙な模様「フェアリーサークル」の謎

チューリングが見抜いた自然界のしくみ
自然界には、まるで人工的に作られたかのような驚くべきパターンが数多く存在します。いったいその背後にはどんな仕組みが隠されているのでしょうか。「今月の科学ニュース」では、天才数学者チューリングが提唱した「チューリング・パターン」と呼ばれる模様の発生について、最新の研究をお届けします。

「神様の足跡」と呼ばれる不思議な模様

ある日のバス停までの道、見上げると一面のうろこ雲。海面を埋め尽くす薄氷のような白くて半透明の雲が、押し合うように作り上げるパターンに目を奪われた。

【写真】10月中旬のうろこ雲(筆者撮影)10月中旬のうろこ雲(筆者撮影)

うろこ雲(巻積雲)の繰り返しのパターンを作るのは、ベナール対流という現象だ。大気中に上下方向の対流がいくつもできることで、うろこ状の雲が生まれる。熱い味噌汁の表面にできる模様も、形は少し違うが、ベナール対流による。テーブルの上のお碗の中に、秋の大空と同じしくみがある。

自然界ではこんなふうに、関係がなさそうなパターンの間に、共通のシンプルなしくみがみつかることが多い。

ゲッティンゲン大学のゲツィン氏らは、2014年に西オーストラリアで、トリオディアという草の群生が、「フェアリーサークル」(妖精の環)という、直径4mほどの円が規則正しく並ぶパターンを作っているのを発見した※1

そしてこのフェアリーサークルが、動物の体の模様ができるしくみと同じ理論で説明できることを確かめ、9月21日にジャーナル・オブ・エコロジー誌で発表した※2

フェアリーサークルは、以前からアフリカのナミブ砂漠でみつかっていた。シロアリが根を食べてしまうせいだとか、地中から有害な一酸化炭素が出てきて植物を枯らしているなどと言われていたが、成因ははっきりしていなかった。

その地域に住むヒンバ族の人々の間では、「神様の足跡」と伝えられているという話もある※3

ナミビアのフェアリーサークル(ナミブ・ナウクルフト国立公園) Photo by Olga Ernst & Hp.Baumeler CC BY-SA 4.0

一方ゲツィン氏らは以前から、フェアリーサークルは植物の自発的な作用によってできると考えていた。砂漠と草地の中間地帯では、貴重な水をめぐる植物同士の競争が起こり、その結果、草のカーペットに「穴」ができる。

さらに、そうした植物の競争のパターンが、「チューリング・パターン」に一致すると考えた。

チューリング・パターンは、1952年にアラン・チューリングが理論化した、生物に自発的にできる規則的なパターンだ。たとえばチーターの体の模様も、チューリング・パターンで説明できることが知られている。

【写真】チーターチーター Photo by Manoj Shah/GettyImages

ゲツィン氏らは、コンピューター・シミュレーションによる予測や、ドローンを使ったフィールド調査などから、オーストラリアのフェアリーサークルがチューリング・パターンに一致することを確かめた。