貧乏旅をしながら世界一周した様子を綴ったエッセイ『ブラを捨て旅に出よう』の著者であり、旅作家である歩りえこさんによるFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。著書では披露されていない、各国の様子やそこで出会った人たちとのエピソードを綴っていただいています。

今回は、東アフリカの内陸にある小さな国「ルワンダ共和国」を訪れたときのお話人類の歴史上最も悲惨といわれる大虐殺が起こった場所に赴き、歩さんが見た想像を絶する光景、ルワンダの歴史やそこに住む人たちと向き合って感じたことをお伝えします。

※本文中には、歩さんが目にして、ルワンダの方から「これを写真に撮って広めてほしい」と言われたミイラの写真が含まれています。閲覧にはご注意いただきますようよろしくお願い申し上げます。

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ルワンダで福沢諭吉は無名だった

東アフリカの内陸にある、四国の1.5倍程度の広さの小さな国「ルワンダ共和国」

長距離バスでルワンダの首都キガリに到着したのは早朝だった。眠い目をこすっていると、何やら騒々しく物売りたちが開いた窓の僅かな隙間からバナナやビスケットを押し込んでくる。朝から何てけたたましい物売りだろう。とにかく一つでもいいから買ってくれと窓をガンガン叩いてくる者もいる。

長距離バスが到着するとたくさんの物売りが駆け寄ってくる。写真提供/歩りえこ

バスを降りると、大きな籠を頭に載せた物売りの女性たちにわっと囲まれてしまった。お腹が空いていたのでバナナを一本だけ買おうとすると……まずは両替が必要なことに気が付いた。

物売りの女性は器用に籠を乗せて歩いている。写真提供/歩りえこ

ルワンダではドルやユーロも使えるが、今後何かあった時のためにドルやユーロはなるべく使いたくない。バナナは諦めてキガリ市内の銀行で両替をしようと、日本円を差し出すと……銀行員は不思議そうな顔をして諭吉をしばし眺めている。

「ルワンダではこんなお札見たことないし、使えないから両替はできません」

ルワンダで福沢諭吉は、全くの無名だった。仕方ない……ドルはできるだけキープしておきたいので手数料はかかるけどカードでキャッシングしよう。5千円相当のルワンダフランをキャッシングすると、ネットで探したキガリ市内の安宿へと向かった。

ルワンダフランの紙幣。写真提供/歩りえこ

アフリカでの安宿はほぼ売春宿だ。それ以外だと中級・高級ホテルになるのでお金がかかる。勿論、貧乏旅をするバックパッカーもできるだけ節約しようと安宿に泊まるが、他の大半の利用者は売春を目的とした、日本でいうラブホテル的な利用目的だ。

安宿に着いてフロントに荷物を預けると、ベッドがギシギシときしむ生々しい音が聞こえてくる。朝から精力旺盛だな……。アフリカを数カ国旅してきて安宿ではお決まりの物音なので、特に気にせず外へと出た。