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オレたちの怒りはどこへ行く…? イギリスの若者、“叫び”の系譜

青春映画で読み解くイギリス階級物語

『アウェイデイズ』にみる若者の階級意識と疎外感

映画『アウェイデイズ』(監督:パット・ホールデン)が公開中である。この映画は、1979年のイングランド北西部のリヴァプールを中心とする州・マージーサイドを舞台とし、「カジュアルズ」というある種のフーリガンのはしりを背景として、中流階級の主人公と労働者階級の「友人」との関係を中心としたほろ苦い青春を描いたものである。

カジュアルズとは、日本ではあまり知られていないであろうが、ひいきのチームのユニフォームを着るのではなくまさにカジュアルな服装でスタジアムに行き、場合によっては集団での暴力行為をはたらくフーリガン文化で、1980年代を中心に流行した。フレッド・ペリーやバーバーリーの洋服を好み、足元はアディダスの三本線、といった格好だ。

映画『アウェイデイズ』公式サイトより
 

この作品はまた、当時のポストパンクやニューウェイブの音楽に彩られ、主人公のポール・カーティとその「友人」エルヴィスはポストパンクのライブで知り合いになっている。

ただし、時代が重なるとはいってもカジュアルズとポストパンクは必ずしも結びつけられる文化ではない。むしろ、この映画の読解のためには、それらの間の距離が決定的に重要なのだ。

事実、主人公のカーティはカジュアルズの集団である「パック」の一員になりたいと望むのだが、彼は常にその集団から疎外されて違和感を抱いている。カーティとエルヴィスのアート嗜好は「パック」ではどうも浮いている。それが最終的に、二人をそれぞれのやり方でこの集団から疎外してしまう。

この距離は、『アウェイデイズ』の理解のためだけでなく、戦後イギリスのユースカルチャー映画と青春映画を階級の観点から見るにあたって決定的に重要である。以下、1950年代まで時計を巻き戻し、イギリス青春映画の系譜と社会との関係を見ていこう。