天津117大廈

爤尾楼―中国全土に工事停止で長年放置の未完成ビル群があふれている

資金、資材、労力の想像を絶する無駄

その多くが分譲マンション

中国語で「爤尾楼(ランウェイロウ)」とは「建設工事が途中で停止したままの未完成ビル」を意味する言葉であるが、中国のオンライン百科事典「百度百科」はその詳細を次のように説明している。

1)爤尾楼が形成のされる原因は、不動産プロジェクトを推進する開発業者の破産、建設資金の不足、プロジェクトに関わる経済紛争、開発業者の法令違反による工事の停止など多岐にわたるが、その大半は資金チェーンの断裂、工事の未完、開発業者の資金不足、銀行の追加融資打ち切り、さらには当該プロジェクトの他投資者への転売不能が原因である。
2)中国には長期間にわたって建設工事が未完成のまま停止している爤尾楼が全国各地に多数存在している。その多くは都市の中心部やその周辺の目立つ場所に存在することから、都市の景観を甚だしく損ねるだけでなく、周辺住民に不便をもたらすと同時に居住環境にも負の影響を多大に与えている。

2020年9月10日付のウェブサイト「澎湃新聞」は次のように報じた。

「ニュースサイト『人民網(ネット)』は全国の指導幹部に対して誰もが苦情を訴えることができる伝言板の「領導留言板」(以下「伝言板」)を中国で唯一設置している。過去10年間に当該伝言板に書き込まれた爤尾楼に関する苦情の件数は8000件以上に上り、その内に占める爤尾楼と化した住居関連の苦情は7478件であり、これら苦情に関連する分譲集合住宅は3188棟に及んだ。また、その中の少なくとも429件は自己または他人が居住している爤尾楼の悲惨な実情を訴えたものだった。」

指導幹部に対する伝言板に苦情を訴えるというのは、事態が深刻で思い余ってのことだと思えるが、その伝言板に10年間で7478件もの「爤尾楼」に関する苦情があったということは、その背後で、訴えても糠に釘だと諦めるなどして、当該伝言板に提起するには至らなかった「爤尾楼」に関する問題は、中国全土で数限りなく発生しているものと思える。

昆明「別様幸福城」

ところで、爤尾楼の多くは中国語で「住宅類公寓(住宅用マンション)」に分類される分譲の集合住宅(以下「分譲マンション」)である。

中国の分譲マンションは「期房(竣工を待って引き渡す住戸)」が一般的なので、販売は竣工以前、開発業者が当該物件の建設許可を取得した段階で行われるのが通例である。

分譲マンションの購入者は、開発業者との間で購入契約を締結した時点で、所定の頭金(契約金額の20~30%)を支払い、これと同時に指定の銀行との間で長期の住宅ローンを締結することになるが、中国では住宅ローンを利用することなく現金で分譲マンションを購入する比率が極めて高いのだという。

 

分譲マンションの建設が当初の計画通りに完成すれば良いが、開発業者の破産や資金不足により建設工事が停止し、その停止期間が1年以上になって爤尾楼になると、困るのは分譲マンションを購入した「業主(マンションのオーナー)」である。