【科学が立証】豊臣秀吉「本能寺の変を事前に知っていた」説は正しかった

科学の成果が、歴史を裏付けた…!
藤田 達生 プロフィール

兵士の食料を手配するのは不可能

さて播田氏は、大返しに従軍した兵士の1日あたりの消費エネルギーを割り出すことで、注目すべき指摘をしてみせた。

兵士の体重を、旧帝国陸軍の兵士の平均体重52kgと仮定し、1日の行軍時間を8時間、携行品は鎧・鉄砲・刀・長槍など約30kgの重量があったとして、運動強度を数値化したメッツ値をもとに計算し、この行軍では、兵士の1日あたりの消費エネルギーは約3700kcalに達していたと見積もったのである。これは、東日本大震災で救助活動にあたった警察官や自衛隊員の1日あたりの消費エネルギーに匹敵するという。

6.5(メッツ値)×8(時間)×52(kg)×1.05(係数)
    +1.0×16(時間)×52(kg)×1.05(係数)=3712.8(kcal)

※1日あたりの消費エネルギーは以下の式で求められる
 メッツ値×運動時間×体重×1.05+1.0×安静時間×体重×1.05

これだけのエネルギーをまかなうには、兵士1人あたりで1日に、おにぎりにして約20個が必要となるという。全軍2万人ではじつに約40万個となり、重量にすれば約40tにもなるというのである。

明智光秀(本徳寺蔵)
 

ただし、2万人というのは山崎の戦いにおける秀吉側の軍勢であり、秀吉の御咄衆(おはなししゅう)であった大村由己が著した『惟任退治記』によれば、この軍勢には総大将の織田信孝をはじめとする大坂城からの合流軍が含まれていたので、実態としては大返しの総兵数は1万人程度と推測するべきである。

そこを修正して計算すると、必要なのは毎日約20万個のおにぎりとなり、重量にすれば約20tとなる。これは播田氏の想定の半分である。

しかし結論としては、それでも播田氏による検証と同じで、これだけの食料を緊急に、必要な地点に手配することは、ほとんど不可能と言ってよいだろう。

自衛隊の猛訓練に等しい疲労感

播田氏の計算を援用すると、それに加えて飲料水は毎日約2万Lが必要で、四斗樽にすると277個となる。さらに味噌や塩、梅干しなどの副食品も必要不可欠である。進軍には、武将用の騎馬900頭、輸送用の駄馬1050頭が必要であり、すると飼葉や水なども必要で、さらに、それらを運送する駄馬も確保せねばならない。