2020.10.23
# アメリカ

あのニューヨーク・タイムズが突き進む歴史歪曲、記事改竄、批判封殺

BLMを後押しも混乱を助長
会田 弘継 プロフィール

進歩派言論人からの相次ぐ批判

「1619プロジェクト」は当初から野心的な試みだった。発表前からピュリッツァー財団と連携して高校の副読本採用を画策し、教育現場への浸透を図ろうとしていた。

そうした中、論争はまず左派からの批判で始まったことは特記しておきたい。特集発表直後の昨年9〜10月に、まず『世界社会主義ウェブサイト』がブラウン大名誉教授で建国期研究の権威、ゴードン・ウッドら著名な歴史家8人とのインタビューを次々と掲載し、1776年の米国独立が奴隷制維持を主たる動機としたという歴史叙述と背景説明などについて事実誤認や曲解を指摘した。

次いで、代表的進歩派雑誌である『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス(NRB)』も建国期の奴隷制問題で本を執筆中だったプリンストン大学の歴史学教授ショーン・ウィレンツの講演記録を掲載。その中でウィレンツは「1619プロジェクト」の事実に対する「いい加減な姿勢」を指摘し、厳しく批判した。

ウッドとウィレンツを含む著名な歴史家5人は昨年12月、NYTに事実誤認などを指摘する詳細な書簡を送ったが、NYTは事実上はねつけている。そのため、有力誌『アトランティック』がウィレンツによる事実誤認の詳細で学術的な指摘と、NYTとのやりとりの経過説明を掲載。

さらに3月に入って、今度はNYTが特集の掲載前にファクトチェックを依頼したうちの1人、ノースウェスタン大学の女性黒人教授も、NYTがファクトチェックを無視して掲載に踏み切ったと告発する手記をオンライン政治ニュースサイト『ポリティコ』に寄せた。

NRBも『アトランティック』も『ポリティコ』も進歩派系であり、いわば仲間からの忠告意見だ。学者たちも含め、黒人の視点に立って歴史を見直す試み自体を否定しているわけでなく、NYTの姿勢は評価している。そのうえでの厳しい批判だ。

 

にもかかわらず批判を聞き入れなかったのは、ピュリッツァー賞がちらついていたためか。すでに教育現場に副読本として行き渡っていたためか。かたくなな姿勢に関し説明はないが、まるで引き際を見極められなくなった、先の大戦での日本の姿に似たところさえある。進歩派のそうしたかたくなな姿勢の背景をうかがわせるような事件も起きた。

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