2020.10.23
# アメリカ

あのニューヨーク・タイムズが突き進む歴史歪曲、記事改竄、批判封殺

BLMを後押しも混乱を助長
会田 弘継 プロフィール

BLM運動を後押ししたもの

7年前に発足したBLM運動は、これまで何度もフロイドさん殺害と同様の事件に出くわしたが、それほど大きな運動にはならなかった。それがフロイドさん事件後、一時は全米で2千数百万人が参加し、米国史上最大ともいわれる抗議運動に発展した。

大統領選の年に当たったという政治的背景はある。だが、それだけでなく、「1619プロジェクト」という大きな思想的支柱を得たからだと見るのが妥当だ。その結果、上記のような運動の変容が起きた。

そうした中で、「1619プロジェクト」が強引ともいえる「歴史読み替え」で歴史を歪曲していた事実が次々と明らかになった。最初に問題を指摘したのは進歩派メディアで、さらに著名な歴史学者らからも批判を浴びた。

そこを逆手にとられて、大統領選挙戦が本格化したこの9月、トランプ大統領がNYT紙とプロジェクトを名指しで攻撃する演説を行い、学校教育から「歴史偏向教育」の締め出しを宣言するに至った。

「1619プロジェクト」の特集がBLM運動によって推奨され、高校の歴史教育の副読本として採用が広がっていたのが背景だ。NYTの試みは、結果的に敵に塩を送ることになったといえる。

そのためNYT社内の混乱も引き起こし、10月9日に自社のコラムニスト、ブレット・スティーブンスが「1619プロジェクト」への包括的批判を繰り広げる大型コラムを掲載するに至った。その掲載をめぐってすったもんだした挙げ句、掲載後も社内から不満が噴出、サルツバーガー社主が不満社員のなだめに入るという事態にもいたった。

一連の経緯は、一国の代表的な進歩派新聞による歴史事実の歪曲が社会の困惑や混乱を引き起こして、政治問題に発展し、右派の伸張をもたらすという、日本人が経験した課題を米国人にも突きつけている。

 

「1619プロジェクト」を社内から批判したスティーブンスは、ジャーナリズムには、事実を探って記録し「歴史の第一稿を描く役割を担うことがあっても、事実を選択して最終稿を描く立場にはない」と警告する。耳を傾けたい。

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