「科捜研の女」を支える沢口靖子と榊マリコの持つ「魔法」の正体

「マリコ寿司を握る」はやはり名作
高堀 冬彦 プロフィール

『科捜研』の法則

脚本もいい。ダメな刑事ドラマは始まった途端に犯人が分かってしまうが、『科捜研』は違う。午後8時半までに「コイツが一番臭うな」と思った人物はシロであると見てまず間違いない。「『科捜研』の法則」である。

それでいて、一部の悪しき刑事ドラマのように犯人をこじつけるわけでもない。「なるほど、コイツが犯人か」と、納得させてくれる。

具体的にはどうかというと、前作シーズン19の第1話「科捜研の女VS科警研の女」の構成はこうだった。

■開始3分:芸妓が殺された
■同6分:洛北医科大法医学教室・風丘早月教授(若村麻由美、53)による解剖。マリコも立ち会う
■同7分:マリコらによる鑑定。室内での地味な絵柄だが、勇ましくてテンポがいい「科捜研の女-厚く-」がBGMとして流れるため、躍動感にあふれる
■同8分:逃走中の連続殺人犯が第1容疑者として浮上
■同9分:「まいど!」と明るく言いながら、風丘教授が科捜研に現れる。手には解剖の鑑定書とお土産のお菓子
■同12分:第1容疑者の犯行であることに疑問を持つマリコ。土門も別に容疑者がいると考える。被害者と揉めていた芸妓だ
■同29分:第1容疑者を逮捕。ただし、「『科捜研』の法則」から考えると、たぶん犯人じゃない。マリコも納得していない
■同34分:第1容疑者が自供。ところが、自供と犯行状況と矛盾する
■同38分:土門が臭いと睨んでいた犯人の芸妓を逮捕(傷害致死容疑)。第1容疑者は被害者が脳死後、それを知らずに絶命させていた
 

この回に限らず、犯人は終幕近くまで分からない。だから見る側を飽きさせない。その上、一服の清涼剤としてマリコの天然ボケを楽しませてくれるのだから、ウケるはずである。

例えばシーズン19の名作、第10話の「マリコ寿司を握る」でのこと。高名な寿司職人・若杉(渡辺哲、70)が殺される。若杉は高級ホテル内に新規出店する寿司職人の選定を頼まれていた。土門たちは犯行動機を、若杉に低評価を下された職人による逆恨みだと推理する。

一方、マリコは低評価を下された職人の一人の母校である寿司職人養成学校の校長に話を聴きに行く。それに留まらず、学校に体験入学する。この時点で既に「マジかよ」である。忙しいはずなのに・・・。

授業が始まり、講師が生徒側に「わさびとショウガを添えるのは、どうしてでしょうか?」と問い掛けると、マリコは「はい!」。真っ先に手を挙げた。そして元気よく、ハキハキと答えた。

「わさびにはアリルイソチオシアネート、ショウガにはジンゲロールが含まれるからです!どちらも抗菌作用があると言われています!」

ゲストの完璧すぎる答えに講師はぼう然。職人を本気で目指すほかの生徒のことなどお構いなしだった…。