マリコは科捜研内のリーダー的立場でもあるが、同僚や後輩の疲れを推し量ったり、プライベートの都合などを配慮したりするのが苦手。いや、正しく言うと、最初からまるっきり考えていない。自分が仕事以外に興味がないから、周囲もそうだと思い込んでいる。働き方改革の仇敵のような人だ。
マリコには魔法の言葉がある。
「鑑定しましょ」
この言葉が発せられると、科捜研メンバーはどんなに疲れていようが、用事があろうが、動き始める。唯一、所長の日野和正(斉藤暁、66)は「マリコ君、そりゃ無茶だよ」などと抵抗を試みるが、すぐに諦める。バックにはメンバーを鼓舞するかのように川井憲次氏によるオリジナルサウンドトラック「科捜研の女-厚く-」が流れる。
マリコの魔法はこれだけではない。キラキラッと輝く目で相手を見つめるのだ。この目で頼まれると、それが無理難題であろうが、メンバーは反論する気力を失う。もしも近くに実在したら、ありがたくない人なのだ。
それでもマリコが愛されるのは物腰が柔らかいから。無邪気だから。私利私欲で同僚や後輩をこき使っているわけではないから。勝手なことをするのも事件解決のためだから。自分が一番働いているから・・・。
沢口が演じていることも大きい。1984年のデビュー以来、一貫して好感度が高く、嫌味がない。『水戸黄門』は代替わりしたが、マリコを沢口以外の役者が演じるのは無理だ。