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「なぜ社会の役に立たない研究も必要なのか?」雲研究者と小説家が考えた

【特別対談】荒木健太郎×伊与原新

地球惑星科学を専攻し、東京大学大学院博士課程を修了した異色の経歴を持つ小説家・伊与原新さん。その経験や視点を活かし、小説のストーリーに自然科学のエッセンスを掛け合わせる作風が大きな注目を集めています。

最新作『八月の銀の雪』で、気象科学をテーマにした一編「十万年の西風」を書き下ろした伊与原さんと、作中にも登場する気象庁気象研究所に勤め、美しい空模様を投稿するTwitterや、映画「天気の子」の気象監修で知られる雲研究者・荒木健太郎さんの対談が実現。

自然科学の魅力、自然科学から読み取れる物語をそれぞれのアプローチで届けるお二人が、気象の面白さや研究者の胸の内を話しました。

(左から)荒木健太郎さんと伊与原新さん。気象研究所にて
『八月の銀の雪』に収録の「十万年の西風」を一編丸ごと公開中。第1回はこちら → 【小説】この男は何者か…?「巨大な凧」を揚げる老人が語った、意外な経歴
 

優れた論文にはミステリーのような面白さ

伊与原 気象予報士の姿はテレビで毎日のように目にしますが、気象研究者の日々って一般的にはなかなか具体的なイメージがわかないと思います。荒木さんはどんな研究をされているんですか?

荒木 私は災害をもたらす雲の仕組みを調べています。去年の東日本台風や、今年の七月豪雨が発生したときにはすぐに解析を行い、気象庁本庁から報道発表をしました。災害と雲の関係を調べることで、その予測精度や監視技術を高度化し、防災気象情報に役立てることを目指しています。

伊与原 私は研究者時代に地磁気、とくに過去の地磁気の様子を復元する研究をしていましたが、その手法はわりとシンプルで、自分で岩石を採ってきて実験室で磁性を測定するというのが基本です。

あわせてその地域の地質調査をすることもあります。気象は全国津々浦々の観測網が高度に発達していますよね。あまり自分で観測することはないのでしょうか。