トランプの再選はあるか?(Photo by gettyimages)

大統領選間近!トランプが支持されたワケと彼の主張を5分で振り返る

「もうアメリカを見習うな!」
かつて「世界の警察官」として世界秩序を維持する大役を担ったアメリカは、「アメリカ・ファースト」というトランプ大統領の選挙スローガンでも明らかなように、その役目を放棄し、自国第一主義を掲げています。なぜアメリカは国際秩序の舵取り役を降りたのでしょうか。最新刊『私たちはどんな世界を生きているか』の著者で哲学者の西谷修さんが易しく解き明かします!

関連記事:世界は、「新世界」という新たな身分制社会になだれ込んでいる!

アメリカのエゴイズム宣言

トランプ大統領は、まずは「アメリカ・ファースト」そして「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」と言います。これはアメリカのエゴイズム宣言と言っていいでしょうが、そのエゴイズムは対内・対外、両方向けです。

「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」はトランプ陣営の合言葉となっている(photo by gettyimages)

もともとアメリカ合州国は「世界の中心のアメリカ」あるいは「アメリカが世界である」といったところがありますから、「アメリカ・ファースト」は外国からはエゴイズム宣言のように聞こえますが、国内ではいわば「生粋のアメリカ人」を大事にすることになります。

だから、白人至上主義などの差別主義団体が勢いづいてデモンストレーションをするようになります。それが、2017年には大きな衝突を引き起こし、2020年には逆に「ブラック・ライブズ・マター」の運動を再燃させることになります。

「ブラック・ライブズ・マター」運動はアメリカの分断を浮き彫りにした(photo by gettyimages)

ところで、かつて「偉大だったアメリカ」がどう弱くなっているのか。それは、「弱者」を保護して「強者」を抑え込むようなことをやってきたからです。

スラムで麻薬に浸ったり、柵を潜って入り込んできた違法移民が、何で保護されなきゃいけないんだ。自分たちはそのために煽りを食って権利を失っている。アメリカは「寛大」な顔をするために、こんなに衰弱してきているではないか。だから寛大さは捨てろ、ということです。

そういう見方からすれば、対外関係も同じで、アメリカは甘える国々のために基地も作って兵隊も送って守ってやっている。そのうえ、自分たちは経済でアメリカをダシに稼ぎまくっている(その代表が日本だというわけですが)。アメリカは二重に負担を負っている。もう甘い顔は見せるな、みかじめ料でも何でも搾り取ってやれ、ということです。

そこには、アメリカは超大国として世界秩序に責任がある、などという考えはみじんもありません。世界平和だとか国際協調とか言うのは、「弱者」やズルい者の言い草で、結局アメリカにたかるだけではないか。「強いアメリカ」にはそんなものは要らない、というのですね。

 

アメリカは帝国をやめる

これはトランプに始まったわけではなく、ここ30年ぐらいアメリカの多くの政権は、国連を束縛とみなすようになっていて、脱退したっていい、むしろ邪魔だと言う大統領もいたけれども、抜けるわけにもいかない。抜けたら世界の盟主としての役割を捨てることになりますから、この辺は逆に、国際秩序の規範力が無視できない形で働いている。

でも、トランプはそれが気に入らない。そしてそれを公言すると相当の支持を得た。戦後の国際連合に体現される国際秩序というのは、最強国アメリカの庇護のもとで、無秩序にタガをはめるべく、そしてそれを相互承認関係として組織すべくできたものでしたが、アメリカ一強の下では、これは言ってみればパックス・アメリカーナの世界秩序だということになります。

というのは、その武力を表立って使わないと約束し、アメリカに帰順させた国々が、相互自立関係を装うことで成立・維持させる秩序ですから。それはアメリカ自身のための秩序でもあったはずです。だから、その「アメリカの平和」の下での世界秩序を「帝国」と呼ぶ本が世界的に売れたりしました(アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート『〈帝国〉』)。