宇野重規が読み解く政治の混乱。民主主義を諦めるにはまだ早い

「本当の政治参加」とはどういうことか
宇野 重規 プロフィール

代議制民主主義が嫌いでも……

筆者としても、現行の代議制民主主義がうまく機能していないことを認めるにやぶさかではない。選挙制度に問題があり、現在の政党が有権者にとって十分身近なものでないこともたしかだろう。

が、よくある言い方を使えば、「代議制民主主義が嫌いでも、民主主義は嫌いにならないで下さい」と主張したい。議会制が直ちに民主主義を意味するわけではない。少なくともそれは、考えられる民主主義の極々一部にしか過ぎない。民主主義を諦めるにはまだ早いのである。

実際、現在、私たちが(代議制)民主主義と呼んでいる諸制度は、たかだかこの二世紀ほどの間に生まれた常識にほかならない。本書でも詳しく解説しているように、常識の形成にあたって、ミルやバジョットをはじめ、一九世紀英国の政治思想家のはたした役割が大きい。

が、だとすれば、今からわずか150年程前のことである。現行の制度はまだまだ再検討の余地を多く含み、具体化の道筋はいくらでも存在する。これが正解だとあまり決めつけるわけにはいかない。

 

民主主義を選び直す

とはいえ、2500年を上回る民主主義の歴史を、一冊の新書にまとめることは容易でなかった。

現代における民主主義を考えるにあたっては、ポピュリズムの問題もあるし、テクノロジーの問題もある。格差の問題もあれば、ジェンダーの問題も大きい。日本国憲法についても触れたい。そしてもちろん、コロナと民主主義も重要なテーマだ。

それらをすべて射程に入れようとした本書は、だいぶ欲張りなものとなっている。

が、民主主義を考えるにあたっては、専門用語をあらかじめ知っていることは必須の要件ではないし、誰もが自分の実感に即して考えることができるのが民主主義だと考えている

できるだけ、気軽な気持ちで読んでもらえればうれしい。そのつもりで本書を書いた。

なんとか民主主義に再生して欲しいと思っている人も、逆に民主主義に巨大な不信を感じている人も、この本を手に取って欲しい。

多くの読者があらためて「民主主義とは何か」を考え、一人ひとりの民主主義の定義を見つけることができれば、本書の目的は達成されたことになる。民主主義を選び直すきっかけになれば最高だ。

民主主義という手垢にまみれた言葉を、もう一度、新鮮な目で見てもらいたい。そのためにこの本を書いた。