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あなたの記憶にかかっているバイアスを心理科学的に検証してみた

簡単上書き、目撃者証言だって問題あり

「なぜあの時あれを見逃してしまったのか」「なぜこんなものを買ってしまったのか」「どうしてあんな簡単な問題が解けなかったのか」

なぜか誤って認識したり、いつもならするはずのない判断や行動。こうした行為や思考の背景には、心の働きの偏りや歪みがあり、これを「認知バイアス」と言います。

実は、この「認知バイアス」、日常の私たちの行動や思考に大いに影響を与えているというではありませんか! おもに視覚と注意や記憶・意識との関連から、心の働きに生じる偏りや歪みがどういったものかを見てみたいと思います。

この違い、あなたは何秒でわかる?

人の注意と記憶における認知科学について、視覚に関連したお話しをしたい。まずは、筆者自身が自分の講義で学生にやってもらう簡単な実験をご紹介するので、読者の方も体感してもらいたい。

【写真】違うところはどこ1 1枚目の写真 photo by Rensink, R. A. (2005). Change blindness. McGraw-Hill Yearbook of Science & Technology. New York: McGraw-Hill.

はじめに、上の画像を見てほしい。続いて、下にあげた画像を見て、最初の画像とどこが違うか、見つけて欲しい。

【写真】違うところはどこ2 2枚目の写真 photo by Rensink, R. A. (2005). Change blindness. McGraw-Hill Yearbook of Science & Technology. New York: McGraw-Hill.

中央にあるエンジンが片方にはあるが、もう片方にはない。両者を並べて見せられれば、この違いに気づくのに5秒かかるという人はまずいないだろう。

しかしこの2枚の絵が交互に提示されると2つの違いを見つけることはかなり困難になる。筆者自身、自分の講義でもよく使うのだが、10秒以内にわかる学生は5パーセント内外に過ぎない。30秒くらい見せても半数くらいの者は違いに気づけない。測ったわけではないが、私も30秒くらいはかかったように思う。

これは、私たちの注意の容量はとても限られていることを明らかにする実験で、注意を向けていないところはもちろん、かなり注意を向けている場合でも、相当に大きな変化に人は気づくことができないことを告げている。

明白な変化=チェンジがあるにもかかわらず、それに気がつかない=ブラインドということから、こうした視覚と記憶の関係に関する心理科学的な研究をチェンジ・ブラインドネスと呼んでいる。

 

「速すぎてわからない」のは間違い!?

2つの画像を素早く交互に見せる実験では、変化の速さのため、細部まで見ることができないからではないかと思う人もいる。しかし事態は逆で、すごく速く切り替えると、ほとんど瞬時に違いに気づいてしまう。

また、スロー・チェンジタイプのチェンジ・ブラインドネスと呼ばれている、変化が徐々に起きる実験もある。

  スロー・チェンジタイプのチェンジ・ブラインドネス Change Blindness demo created by J. Kevin O'Regan(http://nivea.psycho.univ-paris5.fr/#CB)

何が変わるかというと、画面下にあるメリーゴーラウンドの台座がはじめは明るいオレンジ色なのだが、20秒くらいかけて徐々に暗いパープルに変化するのである。画面の1/4を占めるものの色が劇的に変わっているにもかかわらず、これには全然気づけない。私は3回くらい見てやっとわかった。学生に見せた時に、これが一度でわかるのは100名に1名程度しかいない。

私たちは自明なことに気づけない人に対して、「お前の目は節穴か!」とあざけったりする。しかし上記のことが示すのは、ほとんどの人の目が節穴ということだ。

では、節穴になる理由はなんだろうか?