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不妊に悩む9000人を診た医師が、「不妊治療の保険適用」を考える

いい医者を見極めるコツ、教えます
菅総理大臣は、政権の大きな目玉政策として、デジタル庁の創設、携帯電話料金の大幅値下げとともに、不妊治療の保険適用を掲げた。これを聞いて、こまえクリニック院長の放生勲氏は心の中でガッツポーズをしたという。不妊治療の保険適用は、その制度設計がうまくなされれば劇的に少子化が改善されるからだというが、その放生氏に不妊治療の現場の内実を明かしてもらった。

不妊治療の医療機関数への驚き

私は東京都狛江市で、内科のクリニックを開設している医師である。自らのかつての不妊治療の患者体験に基づき、内科診療の傍ら、クリニックに「不妊ルーム」というものを開設し、もう20年になる。

「不妊ルーム」とは、不妊に悩むカップルの駆け込み寺であり、自然妊娠と不妊治療の間に位置するベースキャンプである。

現在までに、8900名を超える女性がここを訪れ、その半数は、当院にてフォローアップを希望し、2086名の女性が妊娠に至っている(2020年10月20日現在)。そして私は、「不妊ルーム」で見てとれる景色、およびそこから得られる知見などを、これまで十数冊の本にまとめてきた。

今年4月には『妊活力! のんびり ゆったり しっかりBook』(佼成出版社)を上梓した。カップルのメンタル、マインドを改善し、妊娠にアプローチしましょうというスタンスの本である。

 

この執筆に際し、私はいろいろな資料を集め、様々なウェブサイトを検索したわけであるが、日本産科婦人科学会のサイトを調べて、とても驚いた。

私は常々、不妊治療の医療機関が東京都に多いと体感していたが、実際に全国の体外受精等の高度生殖医療を行える医療機関の数を調べて、これほどまでに東京都が突出しているとは思っていなかったのである。

私は日本地図の中に、それぞれの都道府県の高度生殖医療が行える施設をマッピングしてみた。全国で619施設が、体外受精等が行えるわけであるが、面積にして国土のわずか0.6%しかない東京都に、こうした施設が103もあり、全体の6分の1に相当している。

都道府県別 体外受精医療機関数マップ

こうした現状において、東京都は、不妊治療=体外受精となっており、不妊治療開始から体外受精に至るまでの期間はきわめて短い。

不妊治療=体外受精という現実

現在、不妊治療の現場で常用されているのが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)という採血によるホルモン検査である。

AMHは卵巣の中に多数存在する卵胞の顆粒膜細胞から放出されるホルモンである。加齢とともに卵胞、そして顆粒膜細胞が減少し、AMHも低下していくことが知られている。

AMHは、いわば卵巣予備能を表す指標とも言え、「卵巣年齢」として不妊治療の現場で広く使用されている。

「あなたは35歳ですが、AMHの値は、42歳に相当します。ですから一刻も早く体外受精を行わないと、妊娠できません」——不妊治療中の女性から、私は医師からこう言われたという訴えをどれだけ聞いたかわからない。AMHが、体外受精に誘導するためのツールとして使われているわけである。