今年オリンピックがあったら家族は終わっていた?

リオ五輪でメダルを取り、その後に世界選手権で優勝、3種目でメダルを取り、東京五輪に内定、どんどん力を伸ばしていった瀬戸選手。しかし東京五輪の影響はそれまでとはレベルの違うものだったようだ。

「私は正直、今回の件は『神様が起こしたこと』ではないかと思っています。いま思い返してみても、あの頃の大也はちょっと変わっていて……。自分の愛していた人ではない感じとでも言うのでしょうか。昔の写真と見比べると明らかに顔が違っていて、表情に険がありました。

今年、予定通りオリンピックが開催されていたら、たぶん私たち家族は終わっていたと思います。私の中には『彼が金を取ったら家庭は崩壊するだろうな』という確信に近いものがありました。このまま金メダルを取ったら、いよいよ手のつけられない『裸の王様』になってしまうと感じたのです。

オリンピックの延期が決まったことに関しては、彼とはほとんど話をしていませんでした。なぜなら東京オリンピックにすべてを賭けてきた人に、何を言えばいいのかわからなかったからです。
延期の知らせに、当然ですが夫はものすごく落ち込んでいました。『もう競泳をやりたいかどうかわからない』とまで言っていたくらいです。

でも、その時の私は、オリンピックよりも不安な気持ちが先立っていました。オリンピックだけが全てじゃないし、人生には金メダルを取るより大事なことがたくさんある。まずそれをちゃんとしないと、これから先、彼を応援することはできないと思っていたからです。

そういうこともあって、彼には『別にやめてもいいんじゃない?』と言いましたし、正直ホッとしてもいたんです。『ああ、彼が変われるチャンスをもらった』って。もちろんここに向けて夫をはじめ多くの人が全力で合わせてきたのに、それがずれてしまったのはとても残念なんですが、それくらい彼個人の変化に危機感を抱いていたんです」

撮影/杉山和行