故・ジャニー喜多川さんがジャニーズ事務所に所属する全員を呼ぶと言われている「You」という言葉。「ユーやっちゃいなよ」と鼓舞されたり、「ユーそれはだめよ」と諭されたというエピソードも多く聞く。この「You」、実は人と人との関係性を対等に導く、ある種の発明でもあったのかもしれない――。ジャーナリストの島沢優子さんが自身のFacebookで起きた論争をもとに、「呼称」が大きく影響する「人間関係」について分析してくれた。

島沢優子さん連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」今までの連載はこちら

FBで起きた「お前」論争

世のお父さん(もしかしたらお母さん)、皆さんは、わが子を「おまえ」と呼んでますか?

先頃、私のフェイスブックでちょっとした論争が起きた。
名づけるなら「お前論争」。それは京都精華学園高校女子サッカー部監督の越智健一郎さんから、ご自身が先頃出版された『サッカーを楽しむ心を育てて勝つ 京都精華学園高校のマネジメント術』(竹書房)をいただいたことがきっかけだ。

「笑顔で楽しく」をモットーにテクニックにこだわる指導でインターハイ準優勝。強豪なのに、卒部式でファッションショーをしたり、全国大会直前に全員でディズニーランドへ連れて行く。そんなユニークな指導で知られる越智さんが、本のなかで「選手のことを何と呼ぶ?」というテーマで書かれていた。

――僕はいままで、選手のことを「お前ら」や「お前たち」と呼んでいました。(中略)当事者間ではなんの問題もないのですが、周りで聞いている人には印象が悪い。大人の男が女の子に「お前ら」と言うと、あまり良い方に受け止められないかもと思い、「お前ら」に代わる言葉を探しました――

たどり着いた代替の呼称。それは「Youたち」だった。日本ではジャニーズ事務所の創業者しか使わないと思っていたが、女子サッカーのコーチが採用していたとは!
越智さんは「お前ら」よりも、「柔らかくて親しみがある」と言い、とても気に入っているそうだ。問いかけるときは「You、どう思う?」。「お前ら、〇〇しろよ」と指示したいとき「You、〇〇やっちゃいなよ!」。
こういった表現は、単にやれよ!と言われるよりも、きっとできると背中を押されている感があるのではないか。

呼び方を「お前ら」から「Youたち」にするだけで、上から言われていないとも感じさせる Photo by Getty Images

そういった主旨のことを投稿したら、コメントがついたり、メッセージを送ってくれる人が続出した。
「子どもに使ってしまう。反省したい」
「娘がどう思っているか気になる。今度聞いてみたい」
「女の子だけでなく、男の子だってやめたほうがいい」
「体育の現場は“お前”が普通でした」
「教育の現場で、おまえを連発するのはスポーツ指導の場がとても多い気がする。パワハラを生みやすいワードの一つでは」

みんなの意見を集約すると、「おまえ呼び」は、言い方や語気の強さ、シチュエーションによっては、呼ぶ側と呼ばれる側において主従関係を生みやすいワードのようだ。