米津、ボカロ人気の背景をなす…「BUMP OF CHICKEN」その本当の魅力

彼らが〈失敗〉した時に見えるもの
伏見 瞬 プロフィール

途中、藤原がアップで映されるシーンでは、彼の顔はカメラの左上方に向けられていて、視線をこちらに返すことは一切無い。

『天体観測』MVより引用
 

この特徴は初期の『Sailng Day』や『オンリーロンリーグローリー』から、最近の『宝石になった日』、『話がしたいよ』まで、多くのMVに共有されている

『Butterfly』は例外的にシンメトリーにバンドを少し遠くから映した構図を多用しているが、アップになると横や斜めの構図になるし、バンドメンバー四人の動きをパステルカラーのアニメーションで再現した『望遠のマーチ』では、斜めからのアップ、上や下からの構図といったこれまでのヴィデオの特徴が、確実に踏襲されている。映像において、まっすぐの視線は周到に回避されている*3

まっすぐではないといえば、コード進行についても同様のことが言える。ほとんどの曲の作曲を担当している藤原基央は複雑なコード進行を志向するタイプではないが、シンプルな中に変則的なコードや転調を配置させることで、バランスをとっていく作曲家である。

彼の作曲の特徴に、分数コードを多用する点が挙げられる。分数コードというのは、ひとつのシンプルな和音の低音部に別の音を置いたもので、藤原は特にD♭(レのフラット)のメジャーコードの下にF(ファ)を置いたコード、同じくD♭のメジャーにA♭(ラのフラット)を置いたコードを多用している。

これらのコードは緊張と緩和が混ざり合った曖昧な響きを有しており、ストレート一歩手前で斜めにずらす、バンプの音楽の特徴を形作っている。『天体観測』『ギルド』『メーデー』といった曲に、これらの特徴が顕著だ。

また、通常のポップソングセオリーであれば展開の途中にくるはずの、ドミナントと呼ばれる途中経過感の強いコードを、バンプはコーラス(サビ)の冒頭に持ってきたりする。新曲の『Gravity』が正にそのような曲で、どこか足が宙に浮いたような浮遊感をサビで漂わせている(曲名はGravity=重力なのに!)。

藤原は以前ラジオで「Cのコードは偽善者っぽい感じがして嫌い」と発言したことがある*4。Cのコードはギターを覚えるときに最初にならう基本中の基本のようなもので、ここにも彼のひねた〈斜め〉の感覚が表れている。